きみとシーソー
BGM
グッデイ・サンシャイン!
脚本家
nmcA
投稿日時
2018-03-14 00:45:47

脚本家コメント
ときどきシーソー記念。
2番の「キミ」は劇団の友達じゃないか説です、はい。
っていうか、この立ち絵最高だな!
スカートをはいてないとか言わない。

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中谷育
「……何やってるの?」
中谷育
私の質問に育はお人形さんのように首をかしげる。
中谷育
『……?シーソーだけど?』
中谷育
「いや、それって一人で遊ぶもんじゃなくない?」
中谷育
『えー、ひとりでも遊べるよ~』
中谷育
そう言って育は頬を膨らませる。久しぶりなのに、全然変わってない。
中谷育
「それで、用事って何?」
中谷育
『うん。ちょっとそうだんに乗ってほしいことがあって』
中谷育
シーソーからおりた育はスカートをパタパタとはたいて、きりっとした顔で私を見つめた。
中谷育
『おさななじみ役の練習を手伝って!』
中谷育
「……はぁ?」
中谷育
『えーっと、おさななじみっていうのは小さい時からの友達のことで』
中谷育
「それは分かるよ。聞きたいのは何で、私がやんなきゃいけないのってこと」
中谷育
『だって、げきだんで一番仲が良くて、昔からいっしょにいるし……』
中谷育
「役のことなんだからアイドル事務所の先輩にでも聞けばいいでしょ?」
中谷育
私の言葉に育が目を丸くする。育って昔から変なところで抜けてるよね。
中谷育
「話は終わり?もう帰っていい?」
中谷育
『えー、もうちょこっとお話しようよー。ひさしぶりに会ったんだし』
中谷育
「だーめ。私だって忙しいの。戻って自主稽古したいし」
中谷育
『じゃあ、いっしょにやろうよ!』
中谷育
育が元気に手を叩く。近くにいたスズメが逃げるように飛んでいった。
中谷育
『わたしも自分の台本持ってきてるし、2人でがんばろうよ!』
中谷育
「……いいよ。ひとりでやらないと意味ないでしょ」
中谷育
私は育から目をそらしてぼそりと呟く。地面にペットボトルのふたが転がっている。
中谷育
『どうして?2人でやった方がちかみちだし、楽しいよ?』
中谷育
育が回り込んで私の顔をのぞきこむ。私は再び顔を背けた。
中谷育
今度の舞台は私が主役。しかも見にくるのは私の家族だけじゃない。あの有名な事務所も……。
中谷育
下唇を強く噛み、空を睨み上げた。灰色の空がとても近く感じ、胸が潰されそうになる。
中谷育
『ねー、やっぱりいっしょにやろーよ』
中谷育
「ダーメ!一人でできないといつまでも子ども扱いされちゃうでしょ!」
中谷育
『それはそうだよ。だって、わたしたちはまだ子どもだもん』
中谷育
思わぬ言葉に驚く私をよそに、育はシーソーの片側にそっと腰かける。
中谷育
『もちろんわたしも子どもあつかいされるのはイヤだよ?わたし、ひとりでなんでもできちゃうし』
中谷育
『ただ、どうしてもひとりでできないことも、やっぱり……ちょっとあるもん』
中谷育
育がワンピースの裾をぎゅっとつかむ。
中谷育
『でもね、そんなときはみんなに手伝ってもらって、子どもをがんばることにしてるの!』
中谷育
『子どもをがんばれば、いつかみんながあっとおどろく大人になれるって思うから!』
中谷育
……子どもをがんばる……
中谷育
私は心の中でその言葉を繰り返しながら、育の横顔を見つめていた。あれ?育ってこんなに……。
中谷育
『わ、わたし、何か変なこと言った?』
中谷育
「ううん。全然。ただ、育、変わったなって思って。なんか、大人っぽくなった気がする」
中谷育
『えっ!ほんと!』
中谷育
「……ごめん、勘違いだったかも」
中谷育
えーっ!?と声をあげてほっぺを膨らませる育を笑って、私は大きく伸びをする。
中谷育
「やっぱり、稽古付き合ってもらっていい?現役アイドルの指導が欲しいな」
中谷育
私の言葉を聞いて、膨らませていたほっぺが満開の花を咲かせた。
中谷育
咲き誇った花は勢いよくシーソーから立ち上がり、公園の出口へと駆けていく。
中谷育
私は空を見上げた。明るくなった灰色の海を二羽のスズメが並んで泳いでいる。
中谷育
『早く行こ!』
中谷育
公園の出口で育が手を振っている。私はシーソーを優しく押し、育の元へと駆けて行った。

(台詞数: 50)