中谷育
先生のお話が終われば、学校もおしまい。
中谷育
今日も、劇場に行かなくちゃ。
中谷育
帰ろうとしたわたしに、クラスの子たちが、いつものように話しかけてくる。
中谷育
「この前、テレビに出てたの見たよ!」
中谷育
ありがとう。次の回も出ることになってるから、良かったら見てね?
中谷育
「ねえ。伊織ちゃんのサイン、もらってきてくれない?」
中谷育
ごめんね。そういうのは、ダメなの。でも、劇場に来てくれたら、伊織さんにお願いしとくよ。
中谷育
まわりの子たちに色々答えながら、わたしは教室を出る。
中谷育
…ちょうどその時、後ろからだれかの声が聞こえてきた。
中谷育
「あ~あ、いいな。私も、アイドルやってみたい。」
中谷育
…みんな知らないから、しかたないね。
中谷育
アイドルって、たいへんなことが多くて、そんなカンタンなものじゃないのに。
中谷育
いそがしいから、通っていた習いごとは、お休みするか回数をへらさなくちゃいけなくなった。
中谷育
おうちに帰ってきて、ご飯を食べてお風呂に入って、宿題をすれば、もうおやすみの時間。
中谷育
大好きなアニメも、おかあさんにとっておいてもらって、見れないままたまっていく。
中谷育
劇場の人たちは、わたしより歌もダンスも上手で、きれいな人やかわいい人たちばかり。
中谷育
わたしもがんばってるけど、たまに自信がなくなっちゃう。
中谷育
…それでも。うん、それでも。
中谷育
ステージの上に立ったときのドキドキとワクワク。
中谷育
わたしの名前をよんでくれる、たくさんのファンのおうえん。
中谷育
大きなステージをやりとげて、みんなでよろこび合ったこと。
中谷育
たのしいこともたいへんなことも、いつもいっしょの大切な友だち。
中谷育
がんばったねってほめてくれる、やさしくてあったかい声。
中谷育
そんなステキなこと、ここにいる人は、みんなみんな…。
中谷育
…だれも、知らない。
(台詞数: 25)