空にメロンが浮かんだ日
脚本家
nmcA
投稿日時
2019-06-06 00:24:27

脚本家コメント
メロン一玉食べたくない?

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萩原雪歩
見間違いだと思った。
萩原雪歩
なぜなら、私の知っているメロンは空に浮いたりなんかしないからだ。
萩原雪歩
でも、顔を上げるとそこには真っ暗な空に緑にかがやく大きなメロンがあった。
春日未来
「絶対に赤だと思うんです!」
萩原雪歩
振り向くと未来ちゃんが目を輝かせていた。
春日未来
「あ、赤っていうのはもちろん中身のことですよ。でも、静香ちゃんは緑だって言うんです」
春日未来
絶対に赤のほうが美味しいのに、と頬を膨らませる。
春日未来
「だから、私、あのメロンを切ってこようとおもうんです」
萩原雪歩
私は思わず聞き返す。
春日未来
「だって、切ってみないと分からないじゃないですか!雪歩さんも来ますか?」
萩原雪歩
突然のお誘いに何も答えられずにいると、未来ちゃんはあーっ!と大きな声を上げた。
春日未来
「あ、でもでも、雪歩さんにはこっちをお願いしたいです!」
春日未来
未来ちゃんはワクワクした表情のまま私に耳打ちする。
春日未来
「ね、おいしそうでしょ!絶対、作りましょうね!」
春日未来
じゃあ、行ってきますと言って未来ちゃんは助走をつけて空へと飛んで行った。
萩原雪歩
私はしばらく呆然としていたが、スコップを取り出しお願いされた作業を開始した。
萩原雪歩
まずはスコップで芝生をトントンと叩いて音を確かめる。
萩原雪歩
そして詰まったような音が聞こえたところを見つけ出して、スコップを地面に突き刺す。
萩原雪歩
2mほど掘ったところで地面の色が緑から白に変わる。未来ちゃんの言ったとおりらしい。
春日未来
「雪歩さん!赤です!!」
萩原雪歩
遥か上空から未来ちゃんの声が聞こえる。
春日未来
「でへへ~♪最高~!」
春日未来
見上げるとパックリと割れたメロンを未来ちゃんがスプーンですくって食べている。
萩原雪歩
私は未来ちゃんに手を振って、作業を再開する。
萩原雪歩
あと少し。手元の感覚がそう告げる。ワクワクする気持ちが止まらない。
萩原雪歩
ザシュリ
萩原雪歩
地面の色が白から赤に変わる。
春日未来
「やったぁ!雪歩さん!」
萩原雪歩
未来ちゃんの声に合わせるように私の足元から赤い果汁が間欠泉のように吹き上がる。
春日未来
「メロンが空にあるんだから、地球はやっぱりスイカですよね!」
萩原雪歩
私は未来ちゃんに向かって大きく頷いた。
春日未来
「それじゃあさっそくミックスジュースを作りましょう……ってうわぁ!?」
春日未来
未来ちゃんがバランスを崩し、メロンが大きく傾く。
萩原雪歩
そして、真っ赤な果汁がメロンからあふれ、滝のように私の頭上へ……
萩原雪歩
……
萩原雪歩
パッと目が覚めた。
萩原雪歩
目の前に見えるのは見慣れた電灯。私の部屋だ。
萩原雪歩
身体を起こそうとしてダルさを覚える。そうだ、確かレッスンのあと……。
萩原雪歩
枕もとを見るとお皿が置いてあった。
萩原雪歩
お皿の上には銀色のフォークと赤い果肉の残ったメロンの皮。
萩原雪歩
私は布団を除けてゆっくりと立ち上がった。
萩原雪歩
……変な夢だったなぁ。メロンが空に浮かんでいるなんてありえないのに。
萩原雪歩
そんなことを考えて、私はくすりと笑った。
萩原雪歩
……でも、楽しかったな。
萩原雪歩
胸の中に残る懐かしい感覚。明日、未来ちゃんにはお礼を言わないと。
萩原雪歩
ふと窓を見るとカーテンの隙間から光がさしていた。
萩原雪歩
窓のそばによりカーテンを開ける。街の光は消え、夜空の星たちは気兼ねなく輝いている。
萩原雪歩
……メロンじゃないよね。
萩原雪歩
窓を開けて身を乗り出して確認する。
萩原雪歩
暗い夜空には煌々と輝くスイカが浮いていた。

(台詞数: 50)