音のなるほうへ
脚本家
かもねぎ
投稿日時
2019-10-15 21:52:24

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ジュリア
ギターを弾いていると、レイが寄ってくる。
北上麗花
「あ、やっぱりジュリアちゃんだ!今日もじゃかじゃーんって感じのいい音!」
北上麗花
「ねぇねぇ、なにか弾いてみて?一緒にセッションしちゃいましょー♪」
ジュリア
こんな風に、こいつは突然来て、アタシのペースなんてお構いなしに振る舞う。
ジュリア
ただ、演奏をしてアイツが歌っている時間は、嫌いじゃなかった。
ジュリア
もちろん楽しい時間だっていうのもあるけど…
ジュリア
その時だけは、いつも振り回されているアイツの手綱を握っている気がして気分がよかった。
ジュリア
アタシが弾いて、あいつが歌う。
ジュリア
そんな時間が、アタシとあいつのテンポが合う、心地いいと思える瞬間だった。
ジュリア
そんな時間が長く続いていると、少し困ったことも起こる。
ジュリア
いつも通りギターを弾いていても、あいつが現れなかった日があった。
ジュリア
レッスン終わりでも、休憩中でも、「ギターの音が聞こえた」ってすぐ寄ってきたのに。
ジュリア
いつもの軽快な足音も、ドア越しに聞こえてくる鼻歌も、今日は聞こえてこなくて。
ジュリア
弦の震える音だけが、アタシしかいない部屋に響いた。
ジュリア
「…ハハッ、また振り回されてる」
ジュリア
気持ちを音に乗せるように、もう一度弦を揺らす。
ジュリア
…届け、なんて、らしくないけど
ジュリア
少しでも、感じてほしくて。
北上麗花
~♪
ジュリア
「…!」
ジュリア
音が、聞こえた気がした。
ジュリア
期待と不安とが搔き混ざった感情で、ドアの開くのを待つ。
北上麗花
「あっ、やっぱりジュリアちゃんだ!今日はちょっぴりビターな感じだね?」
北上麗花
「プリン食べてきたからちょうどよかったかも!ねえ、今日はどんな風に歌う?」
ジュリア
「…ハハッ」
ジュリア
「…なら、『待ちぼうけのLacrima』でも歌うか?」

(台詞数: 26)