星に手が届く音
脚本家
瑞名子路
投稿日時
2019-10-16 11:28:42

脚本家コメント
現実を飛び越え、私たちの記憶をも巻き上げながら、最後には日常へと着陸する。麗花さんの素敵なところのひとつだと思います。

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高山紗代子
──合宿の夜、共有ルームから音楽が漏れ出してくる。
高山紗代子
──軽やかで瞬発な和音、痛快な響き。扉を開けると、その音楽はよりいっそう強く更新される。
ジュリア
……どうも、しっくりこないんだよな
高山紗代子
ジュリア、考え事?
ジュリア
っと、サヨか。いや、大したことじゃないんだけど……
高山紗代子
ギターを弾きながら「しっくりこない」だなんて、どうしたの?
ジュリア
ハハ、なんだ、聞いてたのか
高山紗代子
ごめん。盗み聞きするつもりはなかったんだけど
ジュリア
いいさ。隠すようなことでもないし、それに……サヨになら、むしろこっちから相談したいくらいだ
高山紗代子
相談? 私で良ければ、喜んで
ジュリア
サンキュ。そうだな……「しっくりこない」っていうのは……何だ、その、作曲の話なんだけどさ
ジュリア
うまく言えないんだけど、星空のイメージと、自分の音楽がうまくハマらないっていうか……
ジュリア
前は簡単にできたんだよ。でもいつの間にかダメになってた。あんなに身近だった星空が……
ジュリア
今ので全部説明できた自信はないけどさ、例えばそういう時、サヨだったらどうする?
高山紗代子
ううん。大丈夫、分かるよ。えっと、そうだね……私だったら
高山紗代子
ごめんなさい。アドバイスにはならないかもしれない。私だったらやっぱり、何度も繰り返すかな
ジュリア
繰り返す?
高山紗代子
うん。そういう感覚って、どんなに大切であっても、日常の中で失っていってしまうものだと思う
高山紗代子
だから、失くしたくないから、取り戻すために何度も練習する。もう一度身体で覚える
ジュリア
もう一度、身体で覚える……
北上麗花
イメージと似た場所に行ってみたらいいんじゃないかな?
ジュリア
うわっ! レイ、どっから湧いてきた!
ジュリア
話聞いてたのか? イメージと似た場所って、どういう……
北上麗花
……私だったら、そうするかな
北上麗花
それじゃあ、早速行ってみよっか♪
ジュリア
え? 行くってどこに……なっ、何しやがるやめ──
北上麗花
紗代子ちゃんも、ねっ♪
高山紗代子
わ、私もですか!? ちょっと待ってください麗花さ──
北上麗花
ふふふ、楽しみだね♪
高山紗代子
────────。
ジュリア
高山紗代子
北上麗花
ジュリア
…………
高山紗代子
…………
ジュリア
……とんでもない目にあった
高山紗代子
……うん、色々と凄かったね
ジュリア
星空だったな
高山紗代子
星空だったね
ジュリア
……あのさ。「失いたくないから練習する」って、さっき言ってたよな
ジュリア
アタシも、そう思う。ありがとな。ウジウジしてないで、まずは挑戦しなくちゃダメだ
ジュリア
……アイツも、こういう事で不安になったりするのかな
高山紗代子
──呟いた後、彼女は「だから嬉しい」とも「だから悲しい」とも言わなかった。
高山紗代子
──ただ、もう一度その音楽を奏で始めた。
高山紗代子
あれ?
ジュリア
ン──何だ。どうかしたか、サヨ
高山紗代子
あ、ごめん。なんだろう。ちょっと音が変わった気がして。
ジュリア
変わったって……どういう風に?
高山紗代子
どうやって表現したらいいのかな。難しいけど、えっと……うん、これかな
高山紗代子
……星空の匂いがする