福田のり子
夕焼けが綺麗だねぇ。
高山紗代子
……そうですね。
福田のり子
ここね、アタシのお気に入りの場所なんだ。
高山紗代子
……そうなんですか。
福田のり子
静かで良いところでしょう。紗代子はどう思…
高山紗代子
のり子さん。
福田のり子
何?
高山紗代子
どういうつもりですか?
高山紗代子
いきなり私をバイクに乗せたと思ったら、こんな所に連れてきて。
福田のり子
紗代子とデートしたかったから、じゃ理由にならない?
高山紗代子
誤魔化さないでください!
福田のり子
冗談だって。
福田のり子
アタシさ、すっごく悔しいことがあると、よくここに来るんだ。
福田のり子
ここって、夕暮れ時には人が居なくなる、穴場スポットなんだよ。
福田のり子
だから、夕日に向かって悔しい気持ちを思いっきり吐き出すようにしているんだ。
高山紗代子
つまり、今日も何か辛いことがあったんですか?
福田のり子
アタシだけじゃない。紗代子も、だよ。
高山紗代子
ッ!?
福田のり子
聞いたよ。この間のオーディションの結果。
高山紗代子
あれは……もう終わったことだから、全然気にしてません。
福田のり子
嘘だね。アタシを舐めないで。
高山紗代子
どうしてそんなことがわかるんですか?
福田のり子
紗代子のことが大好きだからだよ!
高山紗代子
ッ!?
福田のり子
紗代子はアタシにとって、すごく大切な友人で、仲間なんだよ!!だからわかる!!
高山紗代子
のり子さん……。
福田のり子
……アタシね、知ってるんだ。
福田のり子
紗代子があのオーディションにどれだけ本気だったか。どれだけ頑張ったか。
福田のり子
ずっと見てた。遅くまで残ってレッスンしていたのも、全部見てた。
福田のり子
ずっと見てきたから……だから、今めちゃくちゃ悔しい!!自分のことのように悔しい!!
福田のり子
紗代子はどうなのさ!?
高山紗代子
……私だって悔しいです。悔しくて悔しくて、死んでしまいそうなくらいに。
高山紗代子
全力を出した。悔いはない。そう思っていました。
高山紗代子
気持ちを切り替えて前向きにならなきゃって。でも、本当は……!
福田のり子
紗代子……ここなら誰もいないからさ、正直になって良いんだよ。
高山紗代子
ッ────!!
高山紗代子
……………………。
福田のり子
どう?落ち着いた?
高山紗代子
……はい。もう、平気です。ちょっとだけ、胸の中のモヤモヤが晴れました。
高山紗代子
のり子さんが連れてきてくれたおかげです。その……ありがとうございます。
福田のり子
良かった。少しは元気になったみたいだね。
福田のり子
それじゃあ、もう日が沈んじゃうし、そろそろ帰ろうか。
高山紗代子
待ってください、のり子さん!
高山紗代子
……あの。お願いがあるんですが。
福田のり子
何?
高山紗代子
えっと……またいつか、私をデートに連れて行ってくれますか?
高山紗代子
できれば、こうやって後ろに乗せて……。
福田のり子
あはは。また悔しい思いしなきゃいけないし、それは困るかなぁ。
高山紗代子
……もう!のり子さんのバカ!
福田のり子
ちょっ、紗代子!キツく絞めすぎ!ギブギブ!
(台詞数: 50)