きっと 何年たっても こうして
脚本家
ひろ
投稿日時
2019-11-14 23:24:40

脚本家コメント
あなたとだから

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七尾百合子
――あなたと出会って、いったいどれだけの時が経ったのでしょう。
七尾百合子
……なんて、言ってみたりして。
七尾百合子
……本当は覚えています。
70年。今日までにそれだけの月日が流れて行きました。
七尾百合子
指折り数える、なんて必要ありません。
だってーー
七尾百合子
全部、覚えていますから。
七尾百合子
あなたと出会った……あなたが私を見つけてくれたあの日から、今日までのこと、全部ーー
七尾百合子
ふふ、実は私、物覚えはいい方なんですよ。
七尾百合子
……好きなこと限定ですけれど。
七尾百合子
……ねぇ、だから、覚えているんですよ。あなたと過ごした、大切な70年の、全部。
七尾百合子
夏祭りに行きましたね。
七尾百合子
渋る私を引っ張るように。
あなたは、私を部屋から連れ出してくれました。
七尾百合子
それじゃあどうして浴衣の用意があったのか、なんて聞かないでくださいね。
七尾百合子
秋の夜長を、二人で本を読みながら過ごした時のこと、覚えていますか?
七尾百合子
あなたを背もたれに、私は優しく包み込まれるように。
七尾百合子
私の勧めたファンタジー小説。
あなたが上巻を。
私は下巻を読みながら。
七尾百合子
百合子、これ主人公どうなっちゃうんだ。お姫様は無事なのか。
七尾百合子
なんて、不安そうに問うあなたに、私はちょっといじわるしたりして。
七尾百合子
あの時のあなたの暖かさ、今でもはっきりと覚えています。
七尾百合子
そうそう、私たちの作った雪うさぎ!
七尾百合子
しばらくの間、玄関の前で私たちをお出迎えしてくれました。
七尾百合子
寒いのは苦手だけれど。
あの時ばかりは、寒い日がずっと続くことを祈っていました。
七尾百合子
……桜並木を、二人でゆっくりと歩くのが好きでした。
七尾百合子
最後に歩いたのは……もう、五年も前のことになるんですね……
七尾百合子
すっかりおじいちゃんだなぁ。
そう、笑うあなた。
七尾百合子
私だって、おばあちゃんって言われ慣れちゃいました。
二人で、笑って。
七尾百合子
顔中、たくさんのしわしわは、きっと、お互いのせいでしたね。
七尾百合子
いつまでも……
七尾百合子
そう、いつまでも……
七尾百合子
あなたと、一緒にいるのだと。
七尾百合子
そのために、私は、生まれてきたのだと。
七尾百合子
そう、思っていました。
七尾百合子
だけれど――時は、平等に、残酷で。
七尾百合子
私たちに許された時間は、少し、違ったみたいで。
七尾百合子
……たくさん、泣きました。
七尾百合子
でも、ほら……今、私笑ってるでしょう?
七尾百合子
あなたがくれたたくさんのもの。
七尾百合子
あなたが残してくれたたくさんのもの。
七尾百合子
それに支えられて。
私は、今もあなたを想って笑っています。
七尾百合子
――あなたに会えるのは、五年後か、十年後か。分からないけれど。
七尾百合子
その日まで、私は
七尾百合子
―――――
プロデューサー
おーい百合子ー
プロデューサー
百ー合ー子ー?
七尾百合子
――ふぇっ!?
七尾百合子
ぷ、ぷぷぷぷプロデューサーさん、いつの間に!?
七尾百合子
な、なななななんでもないです!
七尾百合子
大丈夫です! 正常です! 正常運転です!!
七尾百合子
――ふぇっ!?
七尾百合子
ぜ、全部……聴こえてた……?
七尾百合子
な、何ニヤニヤしてるんですか!変態です!! もうやだ!殺して、いっそ殺してーー!!

(台詞数: 50)