もう一つのマイペースマイウェイ
脚本家
赤津紀一
投稿日時
2019-11-26 11:57:16

脚本家コメント
だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。

マタイによる福音書 6:24

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福田のり子
ねえ、嘘でしょ……嘘だといってよ。プロデューサー……
福田のり子
「すまない。俺は……」
福田のり子
“プロデューサー”だから……?
福田のり子
「ああ」
福田のり子
そんな……そんなのって……そんな返事って……ひどいよ……!
福田のり子
「ごめん。でも俺はプロデューサーで、お前は担当のアイドルなんだ。だから――」
福田のり子
嘘だッ!嘘でしょ!!アタシはそんな上っ面の言葉が聞きたいんじゃないっ!!
福田のり子
アタシの気持ちを……受け止めるのが怖くなったんでしょ。正面から……
福田のり子
ねえ……そうだと言ってよ、ねぇ……!
福田のり子
“付き合ってください”と宣言したアタシの告白にプロデューサーは答えてくれなかった
福田のり子
彼の正直な……「私を人としてどう想ってくれているのか」を聞きたかった。それなのに
福田のり子
ずっと「俺とお前はそういう間柄じゃない」の一点張りで……
福田のり子
彼は私のことを人として見てくれてなかった。仕事上の対処すべき存在、理想をぶつける
福田のり子
ただの触媒……商売稼ぎのための……要するに「モノ」としてしか見てくれてなかったんだ
福田のり子
そう思ってしまった瞬間、(もちろんそんなはずないのに――)アタシは彼に掴みかかってた
福田のり子
彼の胸ぐらに。首をしめるように。お願い私を見て、とすがるように……
プロデューサー
「ごめん……でも、のり子。俺は本当にお前の良さをみんなに――」
福田のり子
(ア、タ、シ、は!!)
福田のり子
(アタシは!「みんなの福田のり子」で居たいんじゃないっ……そんなこと一度も……!)
福田のり子
(アタシは……「あなただけの、のり子」に成りたくて……もう、そのくらい大好きで……ッ!)
福田のり子
どうして……? どうしてあんなに一緒だったのに……毎日、毎日、楽しくて素敵な日々を……
福田のり子
うぅ…ぐっ……過ごして……あぅ……ぁあっ……来た……デショ……? あれは……??
福田のり子
うぅっ、うあっ、うあぁあぁああぁあああああああああーーーー!!
福田のり子
私は泣いた。彼の胸元で。泣き崩れてうずくまるまで泣いた。彼はどうもせずただ困っていた
福田のり子
それが……とても哀しくて……悔しくて……全然アタシには割り切れなくて――――
福田のり子
――アタシはアイドルを辞めた――
福田のり子
福田のり子
・・
福田のり子
・・・
福田のり子
――それから十数年の月日が経って、アタシとプロデューサーはまたあの時の公園へ来ている
福田のり子
いやぁ~~しっかし、ホンットに久しぶりだよねぇ~!
福田のり子
すっかり偉くなっちゃった? あ、そうでもない? まだ現場でがんばってんだ? へぇ~
福田のり子
アタシもちゃんとした職に就かないとな~~フラフラ、バイクばっか乗り回してないで……
福田のり子
しっかし、こうして……アレだね。えへへ、また二人で会える日が来るなんて、ね
福田のり子
(そう言って振り返ってみた彼の頭には、よく見ると白髪が増えていた)
福田のり子
(アタシだって、そういうのを見せたくなくて、あのときのまま髪を染め続けている)
福田のり子
(お互いに年を取った。もう彼に対する複雑な想いは私の中にはない)
福田のり子
(けれど、それとは別に……)
福田のり子
ねぇ、〇〇さん。いや……ここはあえて「プロデューサー」って言おうかな
福田のり子
こうして「会って欲しい」って直談判しに来たんだし、ストレートに言っちゃうね
福田のり子
わがままで今さらなお願いなんだけれど……「もう一度、私をプロデュースして」みない?
福田のり子
(私はそこで昔の持ち曲もあるし……など自分に出来る精一杯のアピールを彼へと伝えた)
プロデューサー
「無理だよ」
福田のり子
…………そっか
福田のり子
…………そっか。だよね、アハハ!
プロデューサー
「でもあのとき歌った、世に出た、あの曲たちは今も君とともにある」
福田のり子
……! そうだね。
福田のり子
ありがとう、ございました。プロデューサー。
福田のり子
私は深くお辞儀をして、彼と別れた。また彼に泣かされた。
福田のり子
探していこう。ここからだ。私のペースで……新しい私の道を