最上静香
で、相談って?
北沢志保
べ、別に何も・・・
最上静香
(缶ビールを持つ手が小さく揺れた。隠し事があります。自白しているようでさえあった)
最上静香
本当に?
北沢志保
・・・
最上静香
言いたいことがあるなら聞くわ。いつもみたいに
最上静香
(嘘。聞きたいのは私。志保に、あなたに相談されたいのは、私)
北沢志保
・・・アイドルって
北沢志保
・・・アイドルって、いつまで続けられると思う?
最上静香
・・・難しい質問ね
最上静香
いくつになってもアイドルとして輝き続ける人はいる。だけど、そんなのは
北沢志保
極一部。例外でしょう
最上静香
(そして、私たちは例外になり得る存在ではない。3年か、5年か。いつか限界はやって来る)
北沢志保
・・・実は
最上静香
ええ
北沢志保
・・・本格的に、女優としてやって行かないかって。声をかけてもらって
最上静香
・・・そう
最上静香
良かったじゃない!!
演技者になりたいって、昔から言ってたものね
演技者になりたいって、昔から言ってたものね
最上静香
(私は今ちゃんと演技できているだろうか)
最上静香
プロデューサーは、何て?
北沢志保
うちから千鶴さんや琴葉さんも移籍した事務所で
北沢志保
よく知っている所だから、相手先については何も心配はいらない、って
北沢志保
・・・うちに残るのも、あちらのお世話になるのも、私の意志を尊重する
北沢志保
そう言ってくれたわ
最上静香
(それは、多分、お手本のような回答で)
最上静香
(けれど、志保の、この子の望む言葉ではなかったのだろう)
最上静香
「うちに残ってくれ」
最上静香
プロデューサーに、そう言って欲しかった?
北沢志保
そ、そんなこと・・・っ
北沢志保
・・・
北沢志保
・・・分からない。分からないのよ
北沢志保
女優にって声をかけてもらって嬉しかった。ぱっと未来が開けたような気がした
北沢志保
・・・でも、まだアイドルを続けたい、765プロにいたい気持ちもあって
最上静香
じゃあ、続ければいいじゃない、アイドル
北沢志保
は?
最上静香
もうアイドルはやりつくした。後悔は無い。次は女優をやろう
最上静香
それじゃ駄目なの?
北沢志保
静香、あなたね、そんな簡単に・・・
最上静香
私は、まだあなたと一緒にアイドルがやりたい
北沢志保
!
最上静香
あと3年か、5年か。いいじゃない、向こうの事務所には待ってもらって
最上静香
それまで、あなたが役者としての価値を示し続ければいいだけのことでしょう?
北沢志保
・・・簡単に言ってくれるわね
最上静香
できないの?
北沢志保
できるわよ
最上静香
(いつもの表情。睨まれて安心するだなんて、私も大概この子に毒されているようだった)
最上静香
・・・もし、
最上静香
(もし、数年後あなたが就活に失敗してたら、責任を取って養ってあげるわよ・・・なんて)
北沢志保
うん? 何か言った?
最上静香
なんでもない。
・・・なんでもないわ
・・・なんでもないわ
(台詞数: 50)