『りんごの木の下で待ってる』
脚本家
ウツボ
投稿日時
2019-12-03 06:03:24

脚本家コメント
じいちゃん、ばあちゃん。長生きしてくれてありがとうねぇ。

#ドラマシアター武闘会「シリアス杯」準決勝投稿作品。
お題「木下ひなた」「家族」

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木下ひなた
『じいちゃん、ばぁちゃん。元気しとっかい?田舎に帰れなくてごめんねぇ』
木下ひなた
『最近はベッドから出れんくて…だからね、ビデオレターを撮ってもらってるんだべさ』
木下ひなた
『じいちゃんとばぁちゃんにたっくさんありがとうって言いたい!って話をしたら』
木下ひなた
『看護婦さんがお手伝いしてくれたんだわぁ。看護婦さんにも、ありがとうだねぇ』
木下ひなた
『したっけ、えっと…じいちゃんばあちゃん、ありがとう。あたしは、なまら幸せだったよぉ』
木下ひなた
『東京に出てくるときも、なんも反対せんで応援してくれたっしょ?あたし、すっごく』
木下ひなた
『うれしかったんだ!ふたりに背中押されたら、百人力だったべ!』
木下ひなた
『それから、いつもいつも仕送りありがとうねぇ。丹精込めて作ったものばっかでさ』
木下ひなた
『中でもりんごが人気でさぁ、友達にわけてあげたら、みんなよろこんでたんだわぁ!』
木下ひなた
『あたしもうれしくてねぇ、みんなまた食べたいって言うから来年も……』
木下ひなた
『あっ…来年は、無理だねぇ…』
木下ひなた
……。
木下ひなた
『…あぁ、やっぱダメだねぇ…あたしの笑顔が一番好きだって、言ってくれたじいちゃんと』
木下ひなた
『ばあちゃんのために、笑顔でいたかったのに…あたしの病気が治らないって聞いてから』
木下ひなた
『毎日ずうっと泣いて、やっと涙枯れたのかなぁって思ったから…ビデオレターを…』
木下ひなた
『ううっ…ありがとうって、言いたいのに…ごめん、ごめんなさい…ぐすっ』
木下ひなた
『じいちゃんばあちゃんより先に死んじゃって…ううっ、ごめんなさい…うううっ…!』
木下ひなた
『うわーーーーーん!!!』
木下ひなた
……
木下ひなた
……じいちゃんばあちゃん、まだこの映画見るべさ?今までたくさん見てるっしょ?
木下ひなた
『うわーーーーん!ご、ごめんなさーい!!!』
木下ひなた
か、顔から火が出そうだべ…若い時の自分の演技見るのって、なまら恥ずかしい…!
木下ひなた
今年30歳になった女が、見るもんじゃないねぇ…。
木下ひなた
……ふぅ、やっと終わった。じいちゃんばあちゃん、涙止まったべさ?良かったぁ。
木下ひなた
久しぶりに田舎に帰ってきたら、映画見ようって言うもんで何だべって思ったら…
木下ひなた
まさか『りんごの木の下で待ってる』だったなんてねぇ。これあたしが初めて出た映画だべさ。
木下ひなた
物語の中で重要な役の、病気の女の子の生い立ちがあんまりにもあたしに似てるって事で
木下ひなた
プロデューサーからオーディションを受けねえか、って言われたの、今でもよぉく覚えてるべさ。
木下ひなた
当時はアイドルで、演技経験もなんも無かったからねぇ…受かった時はそりゃもうびっくりしたなぁ。
木下ひなた
…え?あたしの泣く演技がすごいって?やめてよぉばあちゃん、あれ何回もやり直ししてるんだべ。
木下ひなた
最初お芝居した時はあんまりにも役の子が悲しくてねぇ、涙が止まらなくて演技が出来なかったんよ。
木下ひなた
それでみんなに迷惑をかけてしまってなぁ…プロデューサーと話して、次の日に再開したんだべ。
木下ひなた
泣きながら、頑張って台詞を言ったのはよぉく覚えてるべさ。今見るとなまら力入ってるけども…
木下ひなた
…そだねぇ。じいちゃんの言う通り、そういうのも含めて、あたしにとっては大切な時間だったわぁ。
木下ひなた
家族と離れるって事が、どういう事か…言葉以上に演じてみて、当時はっきりとわかったからねぇ。
木下ひなた
それにね、今家族と一緒に生きてるあたしがどんだけ幸せかってのも、14歳ながら感じたんだわぁ。
木下ひなた
だからかねぇ…演技は恥ずかしかったけど、こうして当時の映画をみんなで見れるってのはさぁ
木下ひなた
なまら幸せって感じるべさ!じいちゃんばあちゃん、長生きしてくれて本当にありがとうねぇ。
木下ひなた
わわっ、また泣かせちゃったべさ。ごめんねぇ、これで涙拭いてね?
木下ひなた
ん?なぁにじいちゃん…今回はどうして田舎に帰ってきたんだって?
木下ひなた
えっ?なんにも聞いてないべさ?お父さんとお母さんからも?本当に?
木下ひなた
そ、そうだべか…あたしから言うって事かなぁ?き、緊張するべさ…。
木下ひなた
う、うん…あのね、じいちゃんばあちゃん。今家族って良いなぁって話をしたっしょ?
木下ひなた
その家族がね…ひとり、増えるんよ…。
木下ひなた
本当は一緒に来る予定だったけども、どうしてもお仕事の都合で…明日、合流するんだけどね…
木下ひなた
だからね、じいちゃんばあちゃん。あのね…
木下ひなた
だからね、じいちゃんばあちゃん。あのね…紹介したい人がいるんだ。

(台詞数: 47)