田中琴葉
ごめんくださーい
七尾百合子
はい、なんでしょう?
田中琴葉
すみません。少し司書室をお借りできないでしょうか?
七尾百合子
そんな事ですか。どうぞいつも通りくつろいでください
田中琴葉
ありがとうございます。職員室で書いてるとどうしても目立っちゃうので
七尾百合子
……もしかして、今年もやるんですか、アレ?
田中琴葉
えぇ、まぁ
七尾百合子
田中先生って本当にマメですよね。頭が下がります
田中琴葉
そんな、私なんかより七尾先生の方が余程マメだと思いますよ?
田中琴葉
だって生徒たちの直近の貸出記録、全部覚えてるんですよね?
七尾百合子
司書ですから。
このくらい普通です
このくらい普通です
田中琴葉
普通じゃありませんよ
七尾百合子
生徒と本の出会いを見届けられるんですから!
記憶に残って当然ですよ!
記憶に残って当然ですよ!
七尾百合子
それよりも、担任してる卒業生全員に手紙を書く方がマメですって
田中琴葉
しー!
七尾百合子
あっ、ごめんなさい。秘密でしたよね
七尾百合子
ええと、司書室で話しましょうか
……どうぞ
……どうぞ
田中琴葉
はい……おじゃましまーす
七尾百合子
田中先生、何か飲みますか?
コーヒーかほうじ茶ならありますけど
コーヒーかほうじ茶ならありますけど
田中琴葉
いえ、お構いなく。万が一こぼしちゃいけませんし
七尾百合子
そうですか
田中琴葉
ええ。ではすみませんが机、お借りしますね。お邪魔でしたらおっしゃってください
七尾百合子
いえいえ。どうぞ、ごゆっくり
田中琴葉
ええと、スマホ……万年筆……と、レターセット……
七尾百合子
ふふっ♪
田中琴葉
?
七尾百合子
ああ。いえ、そのレターセット。田中先生っぽいなと思って
七尾百合子
シンプルですけど、すみっこの桜の模様が可愛らしくて。素敵です
田中琴葉
そうですか?
……なんだか照れちゃいますね
……なんだか照れちゃいますね
七尾百合子
きっと生徒たちも喜んでくれますよ
田中琴葉
そうだと良いんですけど
七尾百合子
いえ、絶対喜んでくれますよ!少なくとも私が貰ったら嬉しいですもん
田中琴葉
ありがとうございます
田中琴葉
……でも確かに、私も貰った時は嬉しかったなぁ
七尾百合子
もしかして、生徒からですか?
田中琴葉
いえ。高校を卒業する時に、担任の先生がクラス全員にくれたんです
七尾百合子
じゃあ田中先生が卒業生にお手紙を書くのって……!
田中琴葉
はい、恩師の先生から受け継いだものなんです
田中琴葉
とても優しい先生で、私が進路に迷ってる時も、親身になって話を聞いてくれて
田中琴葉
その先生がそっと背中を押してくれたから、今の私が在るんです
七尾百合子
良い先生だったんですね
田中琴葉
ええ。私の憧れの先生です
田中琴葉
そのお手紙は、今でも迷ったり悩んだりした時に読み返しているんです
田中琴葉
光が見えない時でも、先生の言葉が道を照らしてくれる気がして
七尾百合子
……素敵ですね
田中琴葉
だから私も、あの子たちが歩く道を、少しだけでも照らす言葉を送れたら良いなって
七尾百合子
田中先生の言葉なら、きちんと生徒の足元を照らしてくれそうですね
七尾百合子
いえ!足元だけじゃなく、ずっと遥か先まで明るく照らしてくれそうです!
七尾百合子
そう、まるで夜の闇を払う朝焼けのように!
田中琴葉
ふふ、七尾先生ったら……
でも、そうなれたら嬉しいです
でも、そうなれたら嬉しいです
(台詞数: 50)