田中琴葉
『本日は、私たちの千秋楽公演に来ていただき…ありがとうございました!』
田中琴葉
…ふぅ
所恵美
いやー…長期公演お疲れ琴葉!まだ拍手が鳴りやんでないじゃん!
七尾百合子
ええ、演じる度に演技が鋭くなっていて…今日は間違いなく最高の舞台でしたよ!
田中琴葉
うん、ありがとう二人とも…
所恵美
んー、何か元気ない?お芝居にミスがあったようには見えないけど…
田中琴葉
ううん、舞台の仕上がりは一番良かったと思うよ。
田中琴葉
そうじゃなくて、今日で私が彼女を演じるのも終わってしまうんだなって…
所恵美
んー…確かこの舞台は好評につき第二回の公演も決まったんだよね。
七尾百合子
はい!このまま好評なら何年も演じられる作品になるかもしれないんですよね!
田中琴葉
うん、私たちが作り上げた物が評価されるのはすごく嬉しい…
田中琴葉
けど、この役を他の人に手渡す事は…よくわからないかな…
所恵美
他人に手渡す…ああ、キャストが交代するからか…
田中琴葉
舞台公演は拘束期間が長すぎて舞台専業じゃない私では続けられない、それは確かなんだけど…
七尾百合子
舞台演劇ならではですよね…ドラマやアニメだと余程のことが無いと交代は無いですし…
田中琴葉
白雪姫や三蔵法師みたいな既に沢山の人に演じられた役を引き継いだ事はあったけど…
田中琴葉
脚本を作る段階から関わって、公演の間どう向き合うかずっと考えて…
田中琴葉
傲慢な言い方かも知れないけど、私と一緒に歩んで育ってくれた役…
田中琴葉
自分の相棒みたいだった彼女が他の人に渡る時、どう言う顔をしたらいいかわからなくて…
所恵美
アタシで言うとエドガーが他の人に演じられるような物か…うーん、どうだろう…
七尾百合子
…卒業って考えるのはどうでしょう?
田中琴葉
卒業って…私が役から卒業するって事?
七尾百合子
いえ逆です、役が琴葉さんを卒業するんですよ!
七尾百合子
彼女が生まれた時からずっと隣に立って見ていた琴葉さん…
七尾百合子
でも、一人前になった今、琴葉さんの庇護を離れて永遠への道を歩み始めるんです…
所恵美
永遠ってまた大袈裟な…
七尾百合子
そうでもないですよ!さっき琴葉さんが言った白雪姫や三蔵法師は正にそうじゃないですか!
七尾百合子
最初に脚本を書いた人、演じた人が亡くなった後もその役はずっと演じ継がれて行く…
七尾百合子
そのあり方は、永遠と呼ぶにふさわしいって思いませんか?
田中琴葉
そっか…そうだよね…
田中琴葉
私がおばあちゃんになっても、例え死んだ後でもあの子は演じられる事で生き続ける…
田中琴葉
そんな永遠の第一歩になれたなら、こんな素敵な事は無いよね…
七尾百合子
ええ、永遠に生き続ける彼女、その原点は確かに琴葉さんにあったんですよ…!
田中琴葉
うん、なら私は私から卒業した彼女の成長を見守って行こうかな…
七尾百合子
ええ、「私が育てた役です」って自慢げに見たらいいんですよ…
所恵美
うーん、言いたい事はわかったし、琴葉が納得したならそれでいいんだけど…
七尾百合子
何か気になる事があるんですか?
所恵美
いや、永遠に生きるって言ってるコレットだけど、あの子作中で死んでるよね…?
田中琴葉
いや、そう言われたらそうなんだけどね…?
(台詞数: 39)