もう一つのプラリネ
脚本家
赤津紀一
投稿日時
2019-12-05 08:07:16

脚本家コメント
一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。
しかし、もし死んだなら、それは豊かに実を結ぶようになる。

ヨハネによる福音書 12:24

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ジュリア
なあ、嘘だろ……嘘だといってくれよ。プロデューサー……!
プロデューサー
すまない。俺は……
ジュリア
ふざけんなよ……何でそんな大事なこと黙ってたんだよ!!
ジュリア
海美が……あたしの……あたしのせいで……
プロデューサー
それは違う!確かに海美が破傷風になって倒れたのはお前とロケに行ったときのボルダリングでの
プロデューサー
怪我が原因だが、その前から……すでに海美は悪性の腫瘍を、病気を患っていたんだ
プロデューサー
がん、だったんだよ。海美は。
ジュリア
…………!!
ジュリア
だとしたら……
ジュリア
だとしたら……余計に、何で教えてくれなかったんだこの野郎ッ!(バチン!!)
プロデューサー
…………
プロデューサー
…………何でだと思う。ジュリア
ジュリア
ハァ、ハァッ、うぅう……あ゛ぁ゛!?
プロデューサー
何で――――何で海美はあんなに運動神経がよくて、元気に見えてバレエも出来るのに――――
プロデューサー
それでも重く辛い病気を押し隠してまで……アイドルになったんだと、想う?
ジュリア
知るかよ……知るかよチクショウ!! うぅぅ……バカ野郎……バカウミ……!
ジュリア
なに勝手に死んでんだよ!! あたしら……765プロの誰にも、誰にも看取られねぇまま……
ジュリア
仲間だったんじゃねぇのかよ!! しかも何で……あたしが、あたしがもう
ジュリア
自分ひとりじゃ、やっぱこの路線じゃやっていけねーって……アイドル辞めるって……
ジュリア
……くぅっ……!! カッコ、カッコ悪すぎんだろ……あたし……! この前っ、この前ぇっっ、
ジュリア
お前に相談にっ、のって……! 貰ったばっかだろ……なぁ、なあ海美!!!
プロデューサー
海美は――俺にこう言ってた。「この世に生きていた証を残したいんだ」って。
プロデューサー
でもそれだけじゃない。って。「すっごく元気だった頃の私を見て喜んでくれる人がいて、
プロデューサー
そんな私をたくさんの人が見て、その人たちも元気になってもらえたら……きっと
プロデューサー
私も元気のままでいれる気がする。私ね、元気のままで死にたいんだ」って――
プロデューサー
だからみんな、ごめんね。って
ジュリア
何だよ……それ……!
ジュリア
ちくしょう……拭いても、何度拭いても、止まんねぇよ……これ……信じらんねぇよ、そんなの……!
プロデューサー
俺のことは……いい。プロデューサー、失格だ。俺は……だがジュリア。お前には――
プロデューサー
海美からの手紙がある。読んで、くれ……頼む
ジュリア
っぅ……ふっぅぅ……(クシャッ)
ジュリア
「ジュリアへ。高坂海美だよ! 私、残したいことたくさん、たくさんたくさんたーっくさん
ジュリア
あるけれど……1個だけ言うね。あのね。ジュリア
ジュリア
私の夢を叶えてくれない?
ジュリア
私の夢を叶えてくれない? ううん、わがまま言っちゃうね。
ジュリア
私の夢を叶えてくれない? ううん、わがまま言っちゃうね。私の夢を継いでよ、ジュリア。
ジュリア
私ができなかった、たくさんの人を元気にするアイドルになる夢。託せる。ジュリアなら。
ジュリア
託したいの。だって私――あなたの歌が大好きだから。ううん、あなたの――
ジュリア
いっしょにアイドルしてきた「ジュリア」が一番大大だーい好き! だから。
ジュリア
「いっしょに最後のステージへ立とう」って言ってくれたのに。ごめんね。高坂海美」
ジュリア
………
ジュリア
………………
ジュリア
………………………………
ジュリア
――2ヶ月後――
ジュリア
皆ァ! 今日のステージ! あたしの、あたし達の本当に大切な人との「最後のライブ」
ジュリア
だった。けれど――やめるんだ。辞める。あたしは……もう
ジュリア
辞めるんだ。諦めることをさ。自分も、歌も、アイドルも……
ジュリア
みんなが今日、会いたかったあいつに。あたしは強く強く背中を推してもらったんだ。だから
ジュリア
その全部を背負って、あたしは歌う。誓うよ、ここに。あいつのために、あんたらのために――
ジュリア
――――聴いてくれ。
『プラリネ』

(台詞数: 50)