鳴慈
脚本家
瑞名子路
投稿日時
2020-01-28 14:42:40

脚本家コメント
ドラマシアターでしかできないことをやってみたつもりでした。武闘会通して本当に楽しかったです。ありがとうございました。

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最上静香
この鼓動の先にあるものを、いつまでも感じていたいと思った。
最上静香
音楽の波片をかき集めては、美しい現実へと翻して。空よりも青く、海よりも青く。
最上静香
私たちは今日、響き合う一瞬を描く。その一瞬はきっと銀川のように明るい領域を持っている。
如月千早
領域。
如月千早
その領域は、広くて、暗くて、何より途方もなく冷たい場所かもしれない。
如月千早
伝え難い感覚を抱くことがある。そして一度視認すると、その感覚をどうしても探してみたくなる。
如月千早
かつて私が目指していた世界とは、似て非なる地点。輝きは近すぎず遠すぎず、それでいて──
如月千早
多分、日常では触れられない場所にある。
如月千早
例えば6秒先の、私とあの娘が静止する瞬間。止まったままの時計が、再び動き出すように。
如月千早
人は過去に戻れないけれど、大切な記憶が私に力を与えてくれる。
如月千早
力は確かな足取りになって、私の響きに群青を彩る。
如月千早
時間の風をかき分けて、静香と向かい合うようにして接近する。
如月千早
万華鏡のように複雑な光彩を放つ瞳から、粒子が溶け出しては風に運ばれていく。
如月千早
──6秒。
如月千早
不思議と、音にならない声は私の元に届いた。
最上静香
──不思議ですね。
如月千早
ずっと前から通じ合っていたような予感があった。
如月千早
──そうね、不思議。
最上静香
──千早さん、信じられますか?
如月千早
──もちろん。だって、私は私の瞬間を歩んできたのだから。
最上静香
──私は、本当に、心から千早さんを尊敬してるんです。
最上静香
──私も、歌で人のこころを満たしてみたい。
最上静香
──綺麗で、まっすぐで、ごまかしの効かない、そんな美しい振動が欲しかったんです。
如月千早
──でも、それだけじゃないんでしょう?
最上静香
──はい。ドキドキが止まらないんです。私は、アイドルだから。
最上静香
客席からは光の嵐が燦々と湧き上がってくる。私に寄り添った光。そして、いつか抱きたい光。
如月千早
──私もね、静香。
如月千早
──あなたのひたむきなところ、ずっと憧れてた。本当よ。
最上静香
それきり千早さんは私の視線をするりと躱して、私たちの6秒は終わった。
如月千早
けれど、音楽はまだ続いている。
最上静香
永遠みたいな一瞬を受け取って、私の声から始まる。
最上静香
蛹が揺らいで、蝶が紐解くような永遠。
如月千早
群青が羽ばたく瞬間。過去を振り切らず、愛おしく抱えたまま飛翔する自由。
最上静香
私の翅はここにある。
如月千早
さあ、ありったけの歌声で。
最上静香
私たちは響き合う力で繋がっている。
如月千早
私たちは、永劫なる音楽に祝福されている。
最上静香
いつしか舞台が暗転しては、拍手や歓声の慈雨が、どこまでも優しく溢れたとして。
如月千早
私たちはどちらともなく顔を見合わせ、微笑むのかもしれない。
如月千早
そしてきっと、合言葉のようにこう言うのだ。
最上静香
──ありがとう。