麗花さんとこぶん~一陣の風を添えて~
脚本家
sikimi
投稿日時
2020-03-16 23:05:00

脚本家コメント
ドラマシアタートライアスロン参加作品です。

第一走者は日常ドラマ、テーマは『風』

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北上麗花
「さんぼ、わさんぼ、わさんぼん~♪」
北上麗花
テレビ収録の帰り道、劇場の最寄り駅で電車を降りて。
北上麗花
鼻歌を歌いながら劇場に向かっていると。少し離れたところに一匹の猫の姿を見つけました、
北上麗花
環ちゃんのこぶんちゃんです。
北上麗花
「こぶんちゃん、こんんちは。こんな所で会うなんて奇遇だね♪」
北上麗花
小走りで近寄ると、こぶんちゃんはにゃーと一鳴きして走り出してしまいました。
北上麗花
「あ!もしかして追いかけっこかな?負けないよ!」
北上麗花
私は、あっという間に小さくなったこぶんちゃんへ向けて駆け出します。
北上麗花
こぶんちゃんは十字路を曲がりました。私もついて曲がると、そこは商店街。
北上麗花
商店街には買い物袋を提げたお母さんや、学生かばんを背負った子供たちの姿が。
北上麗花
「ちょうど、下校時間とお夕飯のお買い物の時間みたいだね」
北上麗花
こぶんちゃんを見失わないように、私も商店街に飛び込みました。
北上麗花
足下を駆け抜けたこぶんちゃんに吃驚したお母さんや、「猫だ猫だ」と声を上げる男の子。
北上麗花
こぶんちゃんは商店街の常連なのか、お魚屋さんが笑顔で眺めている姿が見えました。
北上麗花
私は子分ちゃんみたいに小柄じゃないから何回もぶつかりそうになるけど、そのたびに
北上麗花
ステップとスピン、それにジャンプ♪
北上麗花
アイドル活動と山登りで鍛えたバランス感覚で躱します!なんちゃって♪
北上麗花
こぶんちゃんの姿を見失わないように走って、たまにファンの人と握手をしてみたりして。
北上麗花
しばらく走ると、こぶんちゃんは急に向きを変えてお店とお店の間に消えていきました。
北上麗花
そのまま追いかけるとそこは細い路地。ゴミ箱とか木箱とかが沢山転がってます。
北上麗花
こぶんちゃんは障害物を気にせず、すいすいと進んでいきます。さすがねこちゃんだね♪
北上麗花
「ふふっ、なんだかアスレチックみたいで楽しい♪」
北上麗花
こぶんちゃんに負けないように、私は速度をなるべく落とさないように進みます。
北上麗花
いくつかの障害物を乗り越えると、路地の出口でこぶんちゃんが止まっていました。
北上麗花
「こぶんちゃん、捕まえた!」
北上麗花
走ることに飽きちゃったのか、佇んでいたこぶんちゃんを抱きかかえます。
北上麗花
その時ちょうど、私を通り過ぎるように風がぴゅうと一吹きしました。
北上麗花
なんとなく、風が向かった方を向いてみたら。
北上麗花
「わあっ……!!」
北上麗花
ビックリするくらい綺麗な景色が、そこに広がっていました。
北上麗花
いつも目にしている街が夕焼けに照らされて、目が覚めるような赤色。
北上麗花
今まで目にする機会は何度もあったはずなのに、まるで初めて見るような、そんな景色。
北上麗花
普通の街並みと、普通の夕日のはずなのに。
北上麗花
ぼうっと見ていると、抱っこしたままのこぶんちゃんが『にゃあ』と鳴きました。
北上麗花
「もしかしてこぶんちゃん、いつもこの時間はこの景色を見てるの?」
北上麗花
私はそう問いかけたけど、まるで聞いてないみたい様子のこぶんちゃん。
北上麗花
興味が無いのか、大きなあくびをしていました。私はこぶんちゃんに笑いかけると。
北上麗花
「そっか、こぶんちゃんにとってはこれが普通の事なんだね」
北上麗花
――――――――――。
北上麗花
こぶんちゃんを抱っこしたまま、私は劇場に向かいます。
北上麗花
素敵な物を見た私の心はとっても軽やかで、今にもスキップしちゃいそう。
北上麗花
「ふふっ。この気持ち、みんなにも知ってほしいなぁ♪」
北上麗花
そんなことを考えていると、劇場の入口にプロデューサーさんの姿を見つけました。
北上麗花
私は小走りでプロデューサーさんに近寄ると。
北上麗花
「お疲れさまです、夕日デューサーさん!お仕事頑張ったのぎゅーっです♪」

(台詞数: 45)