望月杏奈
仮面。
望月杏奈
素顔を隠すために、あるいは別の何かになりきるためにつける、偽物の顔。
望月杏奈
ONとOFFを切り替える杏奈も、仮面を被ってアイドルをしているのかもしれない。
北沢志保
仮面。
北沢志保
自分の属性を上書きして、別の属性を重ね合わせる偽物の顔。
北沢志保
14歳の少女という属性ではなく、一社会人としての属性を得るために私は身につけている。
望月杏奈
「はっ、っ! はっ、はっ!」
北沢志保
「っ! ふっ、はっ!」
望月杏奈
無敵のONモード、杏奈の作り上げた最強の仮面。
望月杏奈
それでも、杏奈の体力が続かなければ、身につけていられない。
望月杏奈
だから、鍛える。レッスンの後、ちょっとだけ無理をして。
北沢志保
歌とダンス。歌には多少の自信はあった。ビジュアルにも。
北沢志保
それでも、ダンスはダメだった。運動神経自体、それほどよくなかった。
北沢志保
だから、鍛える。レッスンの後無茶を重ねてでも。
望月杏奈
「っ! とと、ふっ!」
北沢志保
「はっ! っっ! と、はっ!」
望月杏奈
息が乱れる。
望月杏奈
足がふらつく。
望月杏奈
体力の限界がもう近い。それでも、もう一歩を、踏み出す。
北沢志保
呼吸が苦しい。
北沢志保
足が重い。
北沢志保
体力の限界が近い。それでも、無理やり体を動かす。
望月杏奈
「はっ! はぁー……はぁー……」
北沢志保
「ふっ! はぁ、はぁ……」
望月杏奈
仮面を被り続けるためには、この程度で止まってはいられない。
望月杏奈
だけど今は、少しだけこの疲労感に浸りたい。
北沢志保
この仮面に見合う働きをするには、この程度で止まってはいられない。
北沢志保
だけど今は、少しだけこの達成感に浸りたい。
望月杏奈
「志保、最後……指先、曲がってた……」
北沢志保
「杏奈こそ、ステップ遅れて誤魔化してたでしょ」
望月杏奈
志保とのレッスンは、心地いい。
望月杏奈
お互い全力でレッスンして、ダメなところを指摘するだけ。
望月杏奈
その抜身の刃のような緊張感が、かえって心地いい。
北沢志保
杏奈とのレッスンは、心地いい。
北沢志保
お互い全力を出して、ダメ出しをしていくだけ。
北沢志保
その抜身の刃のような緊張感が、心地いい。
望月杏奈
杏奈とはまた違う、アイドルの仮面。
北沢志保
私とはまた違う、アイドルの仮面。
望月杏奈
理由も見た目も違うけれど。
北沢志保
ある意味似たもの同士なのかも知れない。
望月杏奈
仮面を被る
北沢志保
偶像同士。
(台詞数: 42)