桜守歌織
見つけたわ二階堂さん、私の生徒たちをどこにやったの?
二階堂千鶴
意外でしたわね。まさかあの子が私に背いてあなたに協力するだなんて。
桜守歌織
ええ、この島にはもうあなたの味方はいないわ。観念なさい。
二階堂千鶴
……ねえ先生。この島はね、あるお金持ちがうるさい世間の目から逃れるために買ったものなの。
桜守歌織
……?
二階堂千鶴
島に建てた屋敷で金持ちとその妻子はひっそりと、しかし幸せに暮らしていた。けれども。
二階堂千鶴
ふとした事故で金持ちと妻は亡くなってしまい、屋敷には娘だけが残ってしまった。
桜守歌織
…つまり、それがあなただと?
二階堂千鶴
最後までお聞きなさいな。その少女はね、とても寂しかったのですわ。親も友人もいない島の生活が。
二階堂千鶴
屋敷には食べ物も服も何もかも残っていたけれど、話し相手だけはどうにもならない。
二階堂千鶴
持っている人形に話しかけても、返事してくれるはずもない。とても辛くて、寂しい毎日だった。
桜守歌織
……
二階堂千鶴
ある時とうとうたまらなくなって、ボートに乗って島の外に出ようとした。
二階堂千鶴
けれどそこに嵐が起きて、ボートは波に攫われ彼女は海の底。ついに助からなかった。
二階堂千鶴
こうして、この屋敷には誰一人いなくなった。少女の人形をのぞいてね。
桜守歌織
……
二階堂千鶴
それからどれほどかも分からない長い年月を経たある時。奇跡が起きたのですわ。
二階堂千鶴
いえ、少女の怨念が乗り移ったのかしら?人形は自分が身動き出来ることに気づいたのですわ。
二階堂千鶴
そう。まるで、人間のようにね。
桜守歌織
いったい何の話をしてるのよ。それより……
桜守歌織
いったい何の話をしてるのよ。それより……うぐっ!?
二階堂千鶴
効いてきたようですわね…人形はね、最初は楽しかった。自由に動き回れることを喜びましたわ。
二階堂千鶴
けれど、だんだん少女と同じ気持ちを抱いたのですわ。この島は本当に寂しい所なんですもの。
桜守歌織
くっ。わ、私に何をしたの……
二階堂千鶴
食べ物にちょっと、ね。安心なさい、何も起きませんわ。志保やあの子たちと同じになるだけ。
桜守歌織
ど、どういう意味。やめて、来ないで……
二階堂千鶴
ふふっ。ああ楽しみですわ、どれほど待ち望んでいたか。やっとここが賑やかになるんですもの。
桜守歌織
い、いや…誰か……
二階堂千鶴
あらいけない、わたくしとしたことが。自分ばかり喜んでいてはダメですわね。
二階堂千鶴
こういうのは少しずつ、お互いを知り合っていくものですわよね。時間はたっぷりあるんですもの。
二階堂千鶴
まずはあらためて、自己紹介をいたしましょうか。わたくしは二階堂千鶴。あなたは?
桜守歌織
わたしは、桜守歌織。あなたの、お友だ……
(台詞数: 32)