人生美味礼讃
脚本家
平沢ヒラリー
投稿日時
2020-04-15 02:14:20

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野々原茜
うーん、なんか眠れないなぁ。
疲れてるし早く寝ないといけないのに。
野々原茜
泊めてもらえたのはいいけど、なーんかこのお屋敷ヘンなカンジなんだよねえ。
野々原茜
まあいいや、明日になれば迎え来るみたいだし……ん?
野々原茜
なんだろこれ。ノートにしてはやけに分厚いしキレイだし。あ、日記帳かな?
野々原茜
……ってコラコラ。良い子の茜ちゃんは他人の日記を盗み見たりなんかしないもんね。さ、寝よ。
野々原茜
野々原茜
……
野々原茜
………眠れない。
野々原茜
どうしよっかな〜。何か本でも読んでたら眠くなるんだけど…おや、こんな所に何かあるぞ?
野々原茜
あ、いっけなーい。これ本じゃなくて日記みたい。でも、もう開いちゃってるししょうがないよね。
野々原茜
えーと。
「○月✕日 腸詰とベーコンの制作に取りかかる」
野々原茜
「ベーコンは燻製にして保存、腸詰は茹でて食す。美味なり。ドイツ麦酒が無いのが惜しまれる」
野々原茜
「×月○日 キャベツを収穫。早速揚げ物に添えて食卓を彩る。塩と酢で味付け」
野々原茜
美味しそうな日記だね。
「×月△日 ミンチ肉を作る、出来ばえはいまいち。炒め物にする」
野々原茜
「△月○日 毛刈りで日を潰す。毛が残っていては肉が台無しなので丁寧にやる。夕飯は野菜のみ」
野々原茜
「○月△日 すね肉を煮込みシチュー。秘蔵のワインで晩餐としゃれ込む」
野々原茜
「○月□日 豆腐作りに成功、念願の麻婆豆腐。ひき肉のよさもありまずまずの出来」
野々原茜
「□月○日 ベーコンエッグサンドを用意しひねもすカード勝負。戦績はまずまず」
野々原茜
「□月△日 ロールキャベツはパンだけでなく白飯にも合うことが分かり満足……
野々原茜
……んもう。何よこの日記、食べ物のことしか書いてないじゃん。飯テロか、孤独の●ルメかこれは。
野々原茜
よほど食べることが好きなんだねこの人……あれ?
野々原茜
そういえば夕ご飯、お野菜しか出なかったよね。けど、この日記はお肉ばっかり……
野々原茜
変だな?手作りベーコンとかソーセージとかいっぱいあるみたいに書いてるのに。
野々原茜
というか、この島牧場なんてあるのかな。一通り見て回ったけど、そんな場所なかったような……
野々原茜
……続き読んでみよ。
「※月○日 肉の貯蔵が底をつく。しばらくは魚と野菜」
野々原茜
「このような時はふと、自分が恐ろしくなる。何をしても満たされない日々」
野々原茜
「島には野菜も魚も豊富にあるというのに、それだけでは満たされない自分がいる」
野々原茜
「どうしてこうなったのか。あの飢えた日々が原因なのはたしかだが、それだけではあるまい」
野々原茜
「もし神が本当にいるのなら、今すぐこの浅ましい愚かな私を罰して欲しい」
野々原茜
「そう思いつつ一方で焦燥感に駆られる自分がいるのを感じる。ああ、肉が欲しい」
野々原茜
「焦げたステーキにかぶりつきたい、ハンバーグにナイフを入れて肉汁を味わいたい」
野々原茜
「ドロドロに煮込んだ肉をフォークで突き刺して、芋と一緒に口の中にほおばりたい」
野々原茜
……
野々原茜
……
「※月△日」
野々原茜
あれ、これ今日じゃん。えーっと?
野々原茜
「島に久しぶりの来客。船が故障して避難したとの事。屋敷にて受け入れもてなす」
野々原茜
「教師1人と女学生2人。いずれも見目麗しき美女なり」
やだなぁ、もう。
野々原茜
ほんとのこととはいえ照れちゃうよ……ん?
野々原茜
「またとない好機なり。これを逃がせば、次の機会はいつになるやらともしれぬ」
野々原茜
「されど焦って傷つけてはならぬ、慎重に事を運ぶべしと自分に言い聞かせる」
野々原茜
「さしあたりよく眠れるよう寝具を洗濯し、くつろがせることにする……
野々原茜
……まさか?
野々原茜
いやいやいや。いくらなんでもそんな、まさか……
野々原茜
か、考えすぎだよね。ハハハ……
野々原茜
か、考えすぎだよね。ハハハ……
(トントン)
野々原茜
は、はいぃ?
二階堂千鶴
失礼しますわ。何やら声が聞こえましたけど、まだ起きてなさってたの?
野々原茜
あ、あ〜すみません。ちょっとその、眠れなくて。たはは……
二階堂千鶴
いけませんわね。よかったらよく眠れるようお薬でも差し上げましょうか?
野々原茜
け、結構ですぅ!その、そういうのあんまり好きじゃないんで。
二階堂千鶴
そうですの。夜更かしはお肌によくありませんわ、早くおやすみなさい?
野々原茜
え、ええそうします。おやすみなさい……
二階堂千鶴
おやすみなさい。
……ぐっすりと、よーく眠ってね?

(台詞数: 53)