孤独のRED ZONE
脚本家
赤津紀一
投稿日時
2021-02-04 19:01:42

脚本家コメント
友情 愛情 人情
全部 諸行無常
正常なのは どんな感情なの?

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豊川風花
― 都内某所 ―
豊川風花
カタン、カタン……
カタン、カタン……
豊川風花
……
豊川風花
……私は、
豊川風花
カタン、カタン……
カタン、カタン……
豊川風花
……
豊川風花
……ぐぅーっ。
豊川風花
腹が、
豊川風花
腹が、減った。
豊川風花
時間や社会にとらわれず
幸福に空腹を満たす時
豊川風花
束の間 彼女は
自分勝手になり
自由になる
豊川風花
誰にも邪魔されず
気を遣わず物を食べるという
孤高の行為
豊川風花
この行為こそが
現代人に平等に与えられた
最高の癒しと言えるのである
豊川風花

『孤独のRED ZONE』
豊川風花
第七六五話 東京都練馬区
富士見台の一人焼肉
豊川風花
人の少ない夕暮れ前の電車に揺られながら、私は物憂げな顔で窓の外を眺めていた。
豊川風花
(何を食べよう……私はいま、何が喰いたい……)
豊川風花
カタン、カタンと無機質に流れる鉄の音。それは私の心にあるものを連想させた。
豊川風花
スタジオ……駅近……
高架下の……
豊川風花
カタン、カタン……
(カチッ、ボボボッ)
(ジューッ……)
豊川風花
「ハイ、ラッシャイマセー!」
「お一人様ですかぁ! こちらの席へどうぞー」
豊川風花
来た。来てしまった。
焼肉。私の天敵。私の恋人。
私の……逃げ場。
豊川風花
「ご注文は何にしますか?」
「ええっと……(迷っちゃうなぁ)」
豊川風花
「カルビとロース、ハラミに……ねぎタン塩! それとカクテキに、冷やしトマトください♪」
豊川風花
「はいっ! お飲み物は?」
「うぅ~ん……」
(今日も悩ましい声出すなぁ)
豊川風花
「じゃあ……白ワインのデキャンタと、シャンディガフで♥」
「かしこまりました~!」
豊川風花
「あ、お姉さん」「はいっ!?」
「あ、すみません……あの、実はこの「ざぶとん」ってヤツ」
豊川風花
「これいま霜降りの、かなり良いの入って、オススメです」「へぇ~」「よかったら……」
豊川風花
「少しお安くするんで……」
「うふふ、じゃあ~それも♪」
「ありがとうございます!!」
豊川風花
また、やってしまった……
完全に顔を覚えられている……
私はアイドル。だけど……
豊川風花
(今日もがんばった私、カーンパーイっ!)
豊川風花
ジューッ(今日は朝からグラビア撮影だった。しかも冬なのに牛柄ビキニの水着で)ゴクゴク
豊川風花
~♪ プハーッ
豊川風花
ジューッ(カメラマンさんが熱心で日が射す内にと長時間撮影で。お昼は食べられてない)グビグビ
豊川風花
~♪ モグモグ
豊川風花
ジューッ(それ自体はよくあること。不規則な生活。別に不満ではない、けれど…)ゴクゴクゴク
豊川風花
アーンッ ~~♪♪
豊川風花
ジューッ(私何してるんだろ、そう想うことは多々ある。そんな時、私は――)グビグビグビ
豊川風花
― 2時間後 ―
豊川風花
「ちょっろ、ころみれぇえーさん! きぃれなすぅ!?」「聞いてる。聞いてるわ風花ちゃん」
豊川風花
「内ッモモが、っく、こうしれ
中に、あ~はぁ! 胸出ちゃるふからいっそキョー調するぉ」
豊川風花
「はぁああ゛ん゛ん゛!?」
豊川風花
「わかったわそれ7回目よ風花ちゃんあのね。こっちも飲み会でね。悪いけどもう電話切っ」
豊川風花
「ええ゛っ゛!? もうらめなの……に゛ゃあPタンに私のギアラを貴方のカメノコで触ロース
豊川風花
言うてチャンジャわらしの本バラみすじにそろ熱々ビビンバな特上ろ棒カルビをクッパッパに
豊川風花
サーロイーン!」「サーロイーン! じゃないわよ! 何言ってんの大丈夫!? 風花ちゃん!!」
豊川風花
「行っけぇ風花さ~ん! Pさんと灰になるまでブッ飛んじゃ、Yeah~!」「こら麗花ちゃ」
豊川風花
「ラララ~♪ 芸能生活円満退社の~ぬふ、じゃなかった祝福の歌~♪」「おいこら歌織ィ!」
豊川風花
「………」「あぁもぉ絶句して泣くな! 大丈夫よ莉緒ちゃん~好きなのよね~よしよし~」
豊川風花
「ぅPザ△*※◎★……」「え!? ちょ風花ちゃ……どこ!? 待ってて、そこ今行くからァー!」

(台詞数: 50)