ロコ
ハァ、ただいまです……
七尾百合子
おかえり、ロコちゃん
七尾百合子
どうしたの?
なんか元気ないね?
なんか元気ないね?
ロコ
……百合子には関係ないです
七尾百合子
さっきロコちゃん、楽しみにしてた「学祭でやる劇の配役決め」行ってたんだよね
七尾百合子
で、どうだったの?
ロコ
……また、村人Aの役でした。
台詞が一つしかない、村人の
台詞が一つしかない、村人の
七尾百合子
そっか……でも役がもらえるのは
スゴいことだよ。
スゴいことだよ。
七尾百合子
どんな「村人」の役なの?
よかったら、教えて?
よかったら、教えて?
ロコ
「ようこそ、勇者さま」
って台詞しかない
って台詞しかない
七尾百合子
うんうん
ロコ
伝説の魔族の末裔
七尾百合子
伝説の魔族の末裔!?
ロコ
幼少の頃の勇者を育て、その子の身代わりで石にされて、勇者と魔王の最終決戦でのピンチで
ロコ
勇者が負けそうになる直前で助けに来るっていう、地味でオーディナリーな役です
七尾百合子
め、めちゃくちゃ凄い役じゃない!?
七尾百合子
私その、てっきり「ちょい役」なのかと……
ロコ
でも、でもロコはまた
「村人A」の役だから……
「村人A」の役だから……
七尾百合子
村人で済ませられないぐらい重要な役じゃない!? さっきの話を聞くと
七尾百合子
ちょ、ちょっとその~~もう少し詳しくストーリーを聞かせてもらえる?
ロコ
ええ。その世界ではヒューマンと魔族の共存がキープされてたんです。伝説の魔族のおかげで
七尾百合子
最初から重要なポジション!
七尾百合子
(もう早くもロコの種族が「大前提」になってるじゃない……)
ロコ
そんなとき強大なパワーを持つ魔王がアドベントして、世界の平和がカタストロフィするの
七尾百合子
え、ちょっと待って……
その劇、壮大すぎない……?
その劇、壮大すぎない……?
ロコ
そして魔王によって、人間界が支配されてしまった魔界で一人、未来の共存の為に
ロコ
勇者の子を託されて、自分の村でかくまうことにするの。
ロコ
「ようこそ、勇者さま」
七尾百合子
めちゃくちゃ良さそうなプロローグ……!
ロコ
でも成長を遂げた勇者から石化を解いてもらった村人は出会ってからの全ての記憶を失うの
ロコ
「ようこそ、勇者さま」
七尾百合子
えぇーっ、何そのめちゃくちゃ切ない展開……!
ロコ
ちなみに
七尾百合子
ちなみに?
ロコ
ラストシーンで魔王をクリエイトしたのは、その「村人」だった。っていうのが判明します
七尾百合子
最後の最後まで持っていくねロコちゃん!?
七尾百合子
最後の最後まで持っていくねロコちゃん!? それ本当に「村人」??
七尾百合子
最後の最後まで持っていくねロコちゃん!? それ本当に「村人」?? インフレ凄くない??
ロコ
魔王の最終決戦で助けてくれた恩人に感謝を抱きながらも封印の間へ向かう勇者一行に
ロコ
後ろから不意打ちを仕掛けて、勇者達を全滅させようとする時に一言……
ロコ
「ようこそ、勇者さま」
七尾百合子
一つの台詞のバリエーション、エグくない!?
ロコ
こうして伝説の魔族の末裔である「霧蘭火・飛影(むらんび・とえい)」は
七尾百合子
「村人A」じゃなかった!
そんな役名だったの!?
そんな役名だったの!?
ロコ
必殺技の「邪王炎殺黒龍波」を真の裏切り者であった勇者のヒロインに撃ち放ち
七尾百合子
なんかスゴく聞き覚えある技名!!
ロコ
己のライフと引きかえに人間界と魔界を分断する結界をその技でデストラクションさせて――
ロコ
「よう、こそ……勇者、さま」
ロコ
と微笑んで、世界を救う……
という実に地味で目立たないチープな役を
という実に地味で目立たないチープな役を
七尾百合子
実に派手で!
七尾百合子
実に派手で! 最重要で目立ちまくりの!
七尾百合子
実に派手で! 最重要で目立ちまくりの! エクスペンシブな!
七尾百合子
実に派手で! 最重要で目立ちまくりの! エクスペンシブな! 【主役】だよそんなもん!!
七尾百合子
ロコちゃん! これ、そんなに凄い大役なら、もっと頑張らないと! 元気出して頑張ろう!?
ロコ
ユリコは何にもアンダスタンドですーっ!!
七尾百合子
ええーーっ!?
ロコ
ただロコは……この台詞が少なすぎる台本と自分の演技メソッドの狭間で迷っていただけです!
七尾百合子
演技の方向性で悩んでたんだ!? ごめんね私、気づけなくって
ロコ
ちなみに勇者役はユリコですよ。台詞ゼロの
七尾百合子
えぇえぇえええーーっ!!??
(台詞数: 60)