木下ひなた
んっしょ。
永吉昴
おーっす。
木下ひなた
あのねえ、昴さん。あたし無人島のサバイバル仕事だけは、絶対にやりたくないんだわ。
永吉昴
えっ、なんで? オレ、前に出た事あるけど、狩りしたり服作ったりして楽しかったぞ?
木下ひなた
そんな生活するのはアイヌの野蛮人だけで充分だよぉ!
永吉昴
思想つよっ!
木下ひなた
どうも、木製バットです!
永吉昴
よろしくなー!
木下ひなた
もうすぐお正月だけども、家族みんな集まったらカルタをすると思うんだよねえ。
永吉昴
カルタなー。でも他に遊ぶことなんて何でもあるだろ?
木下ひなた
娯楽に満ち溢れた都会モノは事情知らないだけっしょや?
永吉昴
あっダメだ。何も言い返せねえや。田舎じゃ普通なのか……。
木下ひなた
そのカルタというのがねえ、あたしの地元で発行されてる『どさんこ農業推進カルタ』さあ。
永吉昴
どさんこ? 御当地カルタってやつ?
木下ひなた
これを遊べば北海道の魅力が知られて、おまけに農業の勉強も出来るって、すぐれものなんだわ。
永吉昴
面白そうだなあ! どんな事書いてるのか教えてくれよ!
木下ひなた
良いよお。あいうえおから順に読んでいくからねえ。
木下ひなた
あ『あれまぁ……。ヒグマだわ』
永吉昴
怖えよ! いきなりクマ出てきたぞ!?
木下ひなた
『どさんこ農業推進カルタ』だからねえ。
永吉昴
魅力じゃなくて、怖いイメージになんじゃねえの?
木下ひなた
ちゃあんとこの先、北海道と農業の良さを伝えてるよお?
永吉昴
んじゃその次は?
木下ひなた
い『イノシシも出たわあ』
永吉昴
なんでカルタなのに続いてんだよ!?
木下ひなた
う『鬱陶しい猿だねえ』
木下ひなた
え『エライことだわあ』
木下ひなた
お『おらが畑が台無しだぁ!』
永吉昴
畑荒らされて、滅茶苦茶になってんじゃねーか!
木下ひなた
農業は楽しいだけじゃなくて、苦労もたくさんあっからねえ。
永吉昴
ちょっと厳しくねーかな?
木下ひなた
これで厳しいって言ってたら、この後はもっとキツイかもしれないねえ。
永吉昴
マジかよ!? じゃあ、か行は?
木下ひなた
か『カモシカの食害をなんとかせねばなあ』
木下ひなた
き『貴重な天然記念物だあ。むげにする事は出来ねえ』
木下ひなた
く『駆除すべきか、共存を目指すのか……』
永吉昴
すっげー真剣な議論だ!
木下ひなた
け『結論は出たべさ!』
木下ひなた
こ『ころせぇっ!!!』
永吉昴
おい! カモシカって駆除しちゃいけねーだろ!!
木下ひなた
過保護にし過ぎたせいで、農業に悪い影響を与えちまう事だってあるんだよお?
永吉昴
てか、誰がやるんだよこのカルタ! 『本当は怖いお百姓さん』のカルタじゃん!
木下ひなた
昴さんが都会モノだから、分かんねえんだよお?
永吉昴
あっ、やっぱダメだ。何も言い返せねえ。
木下ひなた
まだまだ続くよお。
次は、さ行だべさ。
次は、さ行だべさ。
木下ひなた
さ『サクランボのネット販売で大儲けしているそうだねえ』
木下ひなた
し『知ってるも何も。田舎の情報網を甘く見ちゃいけないべさ』
永吉昴
えっ、何これ……?
木下ひなた
す『好き放題してもらっちゃ困るよぉ。みんな苦労してるのにアンタだけ良い想いするなんて』
木下ひなた
せ『せっかく田舎に移住してきてもらったのに、がっかりだべさ』
木下ひなた
そ『その後、彼の姿を見た者はいなかった』
永吉昴
おっかねえよ!? 最初のヒグマがマシに聞こえんだけど!
木下ひなた
だから良い事も悪い事も、ひっくるめて勉強になるんだわ。
永吉昴
今のところ、農業と田舎の怖いことばっか教えられてんだけど……。
木下ひなた
まだあっからねえ。
次は、た行だよお。
次は、た行だよお。
木下ひなた
た『田んぼが全部ダメになっちまっただー!』
永吉昴
ん? 何があった。
木下ひなた
ち『地中からガスが噴き出てるみたいだべさー!』
永吉昴
うわ、こりゃ大変だ。
木下ひなた
つ『土が全部ダメになっちまっただあ……。おや?』
木下ひなた
て『天然ガスが噴き出ているのかい!?』
木下ひなた
と『東京のガス会社に引き取ってもらって、大儲けするべさ!』
永吉昴
農業どこいったんだよ!
やめさせてもらうぜ!
やめさせてもらうぜ!
木下ひなた
ありがとさんでしたあ。
(台詞数: 64)