周防桃子
(ドンドンドンドンドン!)
周防桃子
すいませーん! すいませーん!
北沢志保
(ガラガラガラガラ)
北沢志保
な、何ですか貴女?
周防桃子
急に押しかけてすいません!
私を弟子にしてください!
私を弟子にしてください!
北沢志保
えっ……?
北沢志保
……うち、豆腐屋よ?
こんな格好してるけど。
こんな格好してるけど。
周防桃子
知ってます!
弟子にしてください!
弟子にしてください!
北沢志保
……ねえ、今何時か知ってる?
周防桃子
朝の4時だよ! これから仕込みをするんでしょ?
北沢志保
早すぎでしょ、いくらなんでも。
どこぞのアスリートの言い回しを真似しなくても良いわよ。
どこぞのアスリートの言い回しを真似しなくても良いわよ。
北沢志保
こういうのって普通、日中に来るものじゃないの?
周防桃子
豆腐屋さんは朝早くからお仕事しているから、日中は仕事終わり際だから迷惑かなって……。
北沢志保
ちゃんと下調べはしてるみたいだけど、それなら仕事終わりに来てほしかったわ。
北沢志保
悪いけど、うちは弟子というか従業員はとっていないの。諦めてくれないかしら。
周防桃子
そんな! 私は絹ごし豆腐のように硬い決意でここに来たのに!
北沢志保
せめて木綿豆腐くらいはあって。
北沢志保
大体貴女、どう見ても子どもにしか見えないんだけど。
周防桃子
こ、これでも高校生だよ!
北沢志保
高校生には見えないわね。
いずれにせよ、ここは高校生が来るところではないわ。
いずれにせよ、ここは高校生が来るところではないわ。
周防桃子
確かに私はまだ高校も卒業してないよ。……でも!
周防桃子
19歳なんだよ!
北沢志保
ダブってるの貴女!?
北沢志保
なら尚更、学業に専念しなさいよ。豆腐屋に来てる場合じゃないでしょ。
周防桃子
本気なんです! 私はここ北沢豆腐店さんの豆腐のように、純粋な真っ白な心で挑みたいんです!
北沢志保
ふーん……。
そんなにうちの豆腐が好きなの?
そんなにうちの豆腐が好きなの?
周防桃子
はい! 特に玉子豆腐が好きです!
北沢志保
真っ白じゃないわね。
濁ってるというか黄色いわね。
濁ってるというか黄色いわね。
周防桃子
豆腐だって大豆だった頃は黄色かったんだから、誤差の範囲だよ!
北沢志保
発言が青い……。
貴女、覚悟が感じられないわよ。
貴女、覚悟が感じられないわよ。
北沢志保
私はね、亡くなった父の意志を継いで豆腐屋をやってるの。生前、相当仕込まれたものよ。
周防桃子
えっ。店長さんのお父さんは亡くなられてるんですか?
北沢志保
ええ。2年前に事故でね。
頭を強くぶつけた事が原因で……。
頭を強くぶつけた事が原因で……。
周防桃子
豆腐の角に?
北沢志保
ツンデレ構文? 死なないでしょ豆腐の角に頭ぶつけても。
周防桃子
いや、でも巨大な木綿豆腐を作って、角に顔面からぶつかって、そのまま長い時間が経てば!
北沢志保
それは頭部外傷じゃなくて窒息って言うのよ。
北沢志保
いやそもそも、そんな巨大な豆腐作ろうとしても、自重で崩壊するわよ!
周防桃子
高野豆腐なら崩れないよ!
北沢志保
ところどころ、変な深堀りを入れて会話をにごさないでくれるかしら?
周防桃子
でも、豆腐に『ニゴリ』は必要不可欠ですよね?
北沢志保
……。
北沢志保
『ニガリ』でしょそれは!
北沢志保
やっぱり話にならないわね。まだ今日の分の豆腐も出来てないし、早く帰って頂戴。
周防桃子
そんな事言わないでください!
私、本当にここの豆腐が好きなんです!
私、本当にここの豆腐が好きなんです!
周防桃子
毎日、北沢豆腐店さんのおいしい豆腐を食べてます! 欠かしたことはありません!
北沢志保
……。
周防桃子
玉子豆腐……胡麻豆腐……豆腐ハンバーグ……おから……豆乳プリン……杏仁豆腐……。
北沢志保
邪道にも程がある!
北沢志保
しかも杏仁豆腐に至っては厳密には豆腐じゃないわよ! 取り扱ってるうちもうちだけど!
北沢志保
貴女、もう角が立つような事しか言ってないから、さっさとお引き取り願うわ。
周防桃子
……ひややっこは角が立つのが良いって聞いたから。
北沢志保
それは……ひややっこを丁寧に切り分けるという言い回し……!
北沢志保
でも盛大に使い方間違ってたわね。今の今まで。
周防桃子
ごめんなさい……。
北沢志保
……明日の朝、同じ時間にうちに来なさい。
周防桃子
えっ?
北沢志保
そこまで豆腐のことについて詳しいなら、本当に心の底から豆腐が好きって事でしょう?
北沢志保
その、豆腐が好きっていう心意気に負けたわ。ビシバシ鍛えてあげるから覚悟してね。
周防桃子
店長さん……!
周防桃子
あっ、でも修行が厳しかったら私、すぐに落ち込んでへこたれちゃうから……。
北沢志保
メンタル豆腐か!
(台詞数: 62)