菊地真
えーと、これでいい?
萩原雪歩
あ、ちがうちがう。それはボディシャンプーだよ。
菊地真
いや、でも髪の毛も体の一部だしあながち間違ってはいないんじゃあないかなあ。
萩原雪歩
シャンプーとって。
菊地真
これ?
萩原雪歩
惜しい!それはハンドソープだね。
菊地真
あんまり浴場にハンドソープ置いてなくない?
萩原雪歩
いやでも実際置いてあったんだし。
菊地真
よし、今度こそシャンプー取ったよ!はい!
萩原雪歩
残念!これはボディ&ソウルだね!
菊地真
唐突に浮世であまり聞かないセンテンスが。
萩原雪歩
というか、真ちゃんさっきからボディソープっぽいもの持ってきすぎだよ。
萩原雪歩
せめてシャンプーに近いものを持ってきてくれないと。
菊地真
理にかなっている。ちょっと待ってね次こそはシャンプー取るから。
菊地真
ていやーっ!
萩原雪歩
????
菊地真
カンフー。
萩原雪歩
真ちゃん、シャンプーとって。
菊地真
お気に召さなかったみたいっ。
菊地真
はいっこれがジャンプーだよ。
萩原雪歩
あ、それは春香ちゃんのだから勝手に使っちゃだめだよ。
菊地真
おっと、ここに来ていきなりリアルな間違いをしてしまった。
菊地真
はいっ!これシャンプーでしょ?ここらへんの固形物はこれで最後だから、
菊地真
これが違ったらもうこの場所側の落ち度と相なるね!
萩原雪歩
あ、それはこの世の嘆き、苦しみ、惑い、それらの一端だね。
菊地真
……
菊地真
……いきなり鬱蒼としてきた。もう少しカジュアル目なドラマだと思ってたのに。
萩原雪歩
あなたが知っている世界はほんの一部、それで本当に世界を好きになったと言えるの?
菊地真
一体どういう事なんだい?
菊地真
これらの嘆きや苦しみが一部なのだとしても、ボクの知っている喜びや楽しみだってほんの一部だ。
萩原雪歩
……着いてきて。
菊地真
ここは……
萩原雪歩
昼とは違って、とっても綺麗だよね。この街だって、夜はこう見えるんだよ。
菊地真
夜の闇がこの街を覆い隠しているから……
菊地真
ボクには本質が見えていないって。そう言いたいのかい?
萩原雪歩
全部救うのなんて、出来るわけないんだよ。だからこんな風に、夜の嘘だけ見るのは……
萩原雪歩
……正しいよ。だって綺麗だもの。
菊地真
……ボクは最初から全てを救おうとなんてしていない。そりゃ出来るなら良いだろうけど。
菊地真
救われるのはボクだけで良いんだよ。
萩原雪歩
……意外ですぅ。真ちゃんがそんな事言うなんて。
菊地真
ただね、ボクが救われるには、みんな笑顔じゃないとだめだから。
萩原雪歩
子どもみたい。
菊地真
それと、雪歩もね。
萩原雪歩
……
菊地真
雪歩は、どうしたら笑顔になってくれる?
萩原雪歩
……皆が救われたら。私だって笑えるよ。
菊地真
そっか、じゃあボクはやっぱり、世界を救おうか。
菊地真
ねえ、雪歩。前から君に渡す物があったんだ。はい、シャンプー。
萩原雪歩
……真ちゃん。
萩原雪歩
それは光だよ。
(台詞数: 50)