萩原雪歩
『えへへ、買っちゃった♪』
萩原雪歩
よう、初めましてだな
萩原雪歩
俺は鍋である。名前はまだない
萩原雪歩
そして今後もつかないだろう
萩原雪歩
ちなみに俺はステンレス鍋だ
萩原雪歩
カレーやシチューは勿論、ご飯を炊いたりお菓子、ケーキを作るなんてこともできる優れものだ
萩原雪歩
まぁ俺のことはこれぐらいでいいだろう。今回俺が話したいのはこの嬢ちゃんのことだ
萩原雪歩
名前は萩原雪歩
萩原雪歩
年は17歳。スリーサイズは…
萩原雪歩
『………』(ミシミシッ)
萩原雪歩
おっと、流石の俺様もヒビを入れられちゃあ堪らないから此処等で止めておこう
萩原雪歩
普段はとても大人しい娘なんだが、少々引っ込み思案過ぎるのが悩みの種だ
萩原雪歩
特にあのスーツ姿の男の前だと一層酷い
萩原雪歩
ふん、あんな軟弱そうな男にビビっちまうなんて、それでも俺を買ってきた女かってんだ
萩原雪歩
やれやれ、今日はシチューを作っているらしい
萩原雪歩
あの男は以前まで弁当を持ってきていたんだが…
萩原雪歩
俺がここにきてからはこの嬢ちゃんに飯を作って貰っている
萩原雪歩
全く、女に飯を恵んでもらうなんざ、軟弱な野郎だ
萩原雪歩
しかし、嬢ちゃんがこんなにも幸せそうな顔をしてるものだから何も言えない
萩原雪歩
まぁ鍋だから喋れないんだがな!
萩原雪歩
おっとすまねぇ、話が逸れたな
萩原雪歩
いやぁ、この嬢ちゃんが料理を毎日作るって言ったときは凄かったぜ
萩原雪歩
終いにはあの野郎に泣きついてたからな、この娘
萩原雪歩
あれをされたら俺でも断れねぇや
萩原雪歩
とまぁ、そんなこんなで今に至るわけだが…
萩原雪歩
今日は無事に作り終えそうだな
萩原雪歩
ん?無事に終わらない時があるのかだって?
萩原雪歩
そうさなぁ、あの野郎が外で食べてくるって時はやべぇな
萩原雪歩
この嬢ちゃん、その日は目に見えて落ち込むしよぉ
萩原雪歩
それだけならまだいいんだが、他の女と食ってくると聞いたときだよ
萩原雪歩
目から光が消えて、何も入ってない俺を、お玉でひたすら無表情で掻き回すんだぜ
萩原雪歩
まさか俺が空鍋を経験するたぁな
萩原雪歩
んんっ!まぁそんなことは今はいいんだ
萩原雪歩
『プロデューサー、味見をしてもらえますかぁ?』
萩原雪歩
お、出来上がりそうなのかね
萩原雪歩
ま、待て!何で俺ごと持っていくんだ!?
萩原雪歩
『あっ♪』(ズルッ)
萩原雪歩
あぁ、落とされるのか
萩原雪歩
痛いだろうなぁ、ステンレスとはいえ少しへこむだろうなぁ
萩原雪歩
くそっ、この俺様の最期があの野郎への料理かよ…
萩原雪歩
「おっと、雪歩大丈夫か?」(イケボ)
萩原雪歩
『ぷ、プロデューサー///』
萩原雪歩
兄貴…///
萩原雪歩
俺、兄貴になら取っ手の縁を磨かれてもいい…///
萩原雪歩
『痛っ…!?』(ピッ)
萩原雪歩
あ~あ~、ボーッとしてるから包丁で指切っちゃってるし。血が出てるぞ~?
萩原雪歩
『………』(ジー)
萩原雪歩
ま、まさか…!?
萩原雪歩
『………………』
萩原雪歩
や、やめろぉぉおおおおお!!!
(台詞数: 50)