バビロンが教えてくれる
BGM
TOWN_RMX
脚本家
親衛隊
投稿日時
2017-01-22 18:11:23

脚本家コメント
序盤は真面目でした。途中で集中力が切れてダメでした。

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萩原雪歩
「うぅ……」
菊地真
その日、彼女は沈鬱な表情を浮かべていた。
菊地真
明朝、豊穣の儀式で贄として捧げられることが決定したと言うのだ。
萩原雪歩
「やだ……。やだよぉ……」
菊地真
村の仕来りは絶対だ。破れば家族共々、追放は免れない。
萩原雪歩
「どうしよう。このままじゃ私、明日から野晒しだよ……」
菊地真
どうやら逃げる気満々のようである。
萩原雪歩
「お金は一生暮らせるくらい有るから、大して困らないけど、」
萩原雪歩
「重いから抱えて歩けないよぉ……」
菊地真
現実的な問題に懊悩する彼女を見るに見かねて、ボクは助言をした。
菊地真
「お弟子さん達に運んでもらえば?」
萩原雪歩
「あ、そっか」
萩原雪歩
「今の内にお弟子さん達に声を掛けて、実家まで運んでもらえばいいんだよね」
菊地真
そう。彼女こと萩原雪歩は建築業を営む萩原組の令嬢である。
菊地真
昔、ボクが音に聞いた話では萩原組の弟子の数は優に百を超えており、
菊地真
しかもそれらは中々に頭脳明晰、加えて筋骨隆々の精鋭揃いだとか。
菊地真
「……ここが実家じゃなかったんだね」
萩原雪歩
「うん、実家は豪邸なんだ」
菊地真
豪邸? 豪邸って何だろう。食べ物かな?
菊地真
──などと訊ける筈もなく、ボクはこれが親友との今生の別れとなると思い、
菊地真
長年の間、胸に秘めていた彼女への思いをさらけ出すことにした。
菊地真
「月が、綺麗ですね」
菊地真
屋根にいたカラスがカアと鳴いた。
萩原雪歩
「……うん」
菊地真
小さく頷いた彼女の顔が見る見るうちに紅潮していく。大成功間違いなしだ。
萩原雪歩
「でも……」
菊地真
前言撤回。
萩原雪歩
「やっぱり……」
菊地真
前言撤回を撤回。これはやはり間違いないだろう。
萩原雪歩
「私、真ちゃんも連れていきます!」
菊地真
彼女が声高らかに「宣言」をすると、どこからともなく、むさ苦しい男達が現れた。
菊地真
ボクは抵抗する暇もなく男達に担ぎ上げられ、黒塗りの動く鉄の塊に乗せられた。
菊地真
目隠しをされ、完全に視界を閉ざされたままドナドナボクは何処かへ運ばれていく。
菊地真
────
菊地真
あまりの快適さに、いつの間にか眠っていたらしい。
菊地真
彼女から声を掛けられ、黒塗りの鉄の塊から降りたボクは寝ぼけ眼をこする。
菊地真
目を開くと、とんでもないものが視界に飛び込んできた。
菊地真
「凄い……」
菊地真
それはあまりにも巨大な……建造物。
菊地真
新緑に咲き誇る花が、流れ落ちる滝が、青い空を渡る鳥が、一瞬にしてボクの脳裏に焼き付く。
萩原雪歩
「ここが、私たちの劇場なんだ」
菊地真
「劇場?」
萩原雪歩
「アイドル、一緒にやろうっ。真ちゃん!」
菊地真
彼女はボクに向けて、まるで白魚のように美しい手を差し出した。
菊地真
「……うんっ!」
菊地真
よく分からないが、雰囲気と勢いだけで手を掴んだ。
萩原雪歩
手を握られ、今更ながら恥じらう彼女。
萩原雪歩
そして、それをぎこちない笑顔で誤魔化そうとする彼女。
菊地真
そうだ。ボクはその表情が好きなんだ。
菊地真
大 好 き な ん だ。

(台詞数: 50)