ひんそーでちんちくりんな私が銃を持つ話
BGM
Impervious Resolution
脚本家
なかやま
投稿日時
2016-11-09 03:33:02

脚本家コメント
恐怖から逃げ
恐怖と向き合う
川を渡りたいけど泳げないから諦めてるけど実は足がつくくらいの浅さだけど入ったことないからわからないドラマ
という きさらP様リクエストから

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萩原雪歩
夜が明ける……
萩原雪歩
ひと晩、じっと同じ体勢で銃を構えていたため足先の感覚はない
萩原雪歩
ただ、指先だけは、いつでも引鉄が弾けるように、何度も何度も温め、ほぐし
萩原雪歩
その時を待っていた……
萩原雪歩
あの怪物を討つ
萩原雪歩
それが、私に課せられた使命
萩原雪歩
正確に言うと、私達。
萩原雪歩
……もうすでに、半数以上の仲間がヤツの手によって帰らぬ人となり
萩原雪歩
なんとか部隊のキャンプまで戻ってこれた他の隊員も皆、重症を負わされていた
萩原雪歩
現時点の隊の中で、手足が揃い、両目が見えているのは私のみ……
萩原雪歩
なので、ひんそーでちんちくりんな只の食事係兼衛生兵である私でさえも
萩原雪歩
こうやって前線で、銃を構えることとなった
萩原雪歩
ヤツは神出鬼没である
萩原雪歩
ここでこうして待っていても、現れる確率は五分五分
萩原雪歩
何事もなく、今日の昼まで時が過ぎれば
萩原雪歩
不名誉ながらも、キャンプを引き上げ、怪我人を背負って撤退する約束になっている
萩原雪歩
私が最後の希望であった
萩原雪歩
祈った
萩原雪歩
ヤツが出てくる事を祈ったのか、出てこないことを祈ったのか
萩原雪歩
それすらも些細な問題になるほど祈った
萩原雪歩
そして、辺りはすっかり明るくなり、日の光が木々の隙間より放射状に差し込む頃
萩原雪歩
風が
萩原雪歩
音が
萩原雪歩
すべて止んだ
萩原雪歩
ヤツだ……
萩原雪歩
ゆらりと巨体を揺らし、森の奥から現れる
萩原雪歩
鋭い爪、ぎらりと光る牙、闇を閉じ込めたような大きな瞳
萩原雪歩
ひとみ……
萩原雪歩
次の瞬間、私は逃げ出していた
萩原雪歩
理性ではなく、直接身体か反応した
萩原雪歩
恐怖
萩原雪歩
恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖怯脅怯怯怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖
萩原雪歩
圧倒的な恐怖を前に、とにかく逃げた
萩原雪歩
しかし、運の悪いことにその先は川であった
萩原雪歩
私は泳げない
萩原雪歩
別のルートを探すために振り返ると……すでに、ヤツがそこに居た
萩原雪歩
人は、極度の緊張状態になると、逆に不思議な落ち着きを取り戻すことがある。
萩原雪歩
私はゆっくりと銃口を
萩原雪歩
私はゆっくりと銃口を自分に向け
萩原雪歩
私はゆっくりと銃口を自分に向け引鉄を弾いた
萩原雪歩
…………
萩原雪歩
……気がつくと、私は川の中に倒れていた
萩原雪歩
なんだ、こんなにも浅いなら、歩いて渡れたではないか
萩原雪歩
暑いような、寒いような……だいぶ血を流してしまったようだ。身体は一切動かない。
萩原雪歩
……死という恐怖が切り離された今なら分かる
萩原雪歩
目の前にいるのは、ただの図体の大きな犬に過ぎなかったということに……
萩原雪歩
私は、そっと手を差し出した
萩原雪歩
ガブリと噛まれる
萩原雪歩
痛い
萩原雪歩
ああ、やっぱり犬は嫌いだ……

(台詞数: 50)