最上静香
秋深し 隣は何を…
最上静香
汁うどん。
萩原雪歩
原田左之助って美形だったんだ。えへへ、真ちゃんにぴったりな配役だったんだね。
最上静香
…イジメですか!
萩原雪歩
ひゃうっ!?び、びっくりした。何?
最上静香
聞いていたでしょう、秋にふさわしい私の俳句。聞こえなかったとは言わせませんよ!
萩原雪歩
え、えっとえっと。そう言えばさっきおうどんがどうとか言ってたような…?
最上静香
聞いてたんじゃないですか。
萩原雪歩
ご、ごめんなさい。本に夢中で。えっと、それでその意味の分からない五七五がどうかしたの?
最上静香
…雪歩さんって何気に毒舌ですね。
萩原雪歩
そ、そうかな。でもそれって、前向きに意見を言えたって事かもだし…
萩原雪歩
それで?そのただうどんって入れたかっただけにしか思えない五七五がどうしたの。
最上静香
…これは私の今の心境を表してるんです。「知る」と「汁」をかけた高度な表現なんですよ。
萩原雪歩
なるほど。つまり駄洒落を言いたかっただけなんだね。
最上静香
身も蓋もない言い方を…雪歩さんにはこのわびさびが分からないんですか?
萩原雪歩
それを侘びさびって言ったら、ウチのお弟子さん達に怒られちゃうかなあ。
最上静香
雪歩さん、案外手厳しいですよね。
萩原雪歩
ご、ごめんなさい。私ほら、前向きになりたいって思ってて、それで。
萩原雪歩
だから事務所の皆にはつい気安い事言っちゃうんだ。ちょっと調子に乗りすぎだよね…
最上静香
いえ、いいんですよ。仲間だって認めてもらえてる気がして嬉しいくらいです。
萩原雪歩
ありがとう。私もそんな(ちょろい)静香ちゃんの事が大好きだよ。
最上静香
なんか不穏な言葉混じってませんでした!?
萩原雪歩
それはそうと、その俳句はやっぱり無しかなあ。と言うか俳句の体を成してないね。
最上静香
はあ。
萩原雪歩
俳句っていうのはね、一番短い定型詩なんだ。ごく短い一瞬を切り取る表現なんだよ。例えば…
萩原雪歩
「油虫 コップの水を 舐め止まず」
萩原雪歩
どうかな?この前麗花さんの部屋で見た風景の描写なんだけど。
最上静香
想像したくないんですけど。
萩原雪歩
おかげでとりあえず出された珈琲には手を付けられなかったよ。
萩原雪歩
短い言葉で表現するかが俳句のカギだから。さっきみたいのだと千早ちゃんにウケるだけだよ?
最上静香
やっぱり、毒舌ですね…
最上静香
ふう。雪歩さんは本当に詩が好きなのね。俳句や短歌まで読んでるなんて。
最上静香
久しぶりに頭使ったらお腹減ったわ。すみません美奈子さん、いいですか?
佐竹美奈子
は~い。今日は何にするの?
最上静香
そうですね…
最上静香
「おうどんや ああおうどんや おうどんや」
最上静香
…いかがでしょう?
佐竹美奈子
了解。ちょっと待っててね…はあ。
佐竹美奈子
働けど働けど、我が中華、うどんに占拠される。虚しくなり、じっと手を見る…か。
萩原雪歩
…イマイチ、かな?
(台詞数: 40)