四条貴音
『はい、765シアター身代金相談サービスです』
我那覇響
電話口から聞こえる貴音の声は、いつも通りの落ち着いた調子だ。
我那覇響
昨日彼女が事務所の掲示板に貼り出したポスターに書かれた、『身代金相談サービス』
我那覇響
それを見た誰もが、何のこっちゃと思いながらも
我那覇響
誰一人として彼女に事由を尋ねる者はいなかった。当たり前だ。
我那覇響
かく言う自分も、まさか電話する事になるとは思わなかったさー。
我那覇響
「あ、貴音?ちょっと聞いて貰いたいんだけど」
四条貴音
『ふふ、相談を聞く為のサービスです。ましてや他ならぬ響の相談とあっては、言わずもがな』
我那覇響
「あー、そっか、悪いな」
我那覇響
さて、どこから切り出すべきだろうかと逡巡し、
我那覇響
「………実はさ、ハム蔵が誘拐されたんだ」
四条貴音
『何と!如何なる悪漢の仕業でしょう!?』
我那覇響
「うん、それで犯行声名?みたいな電話がかかって来て、録音したんだけど」(ピポ)
我那覇響
ζ*'ヮ')ζ<【こぜにだ、こぜにをだせ】
四条貴音
『……………』
我那覇響
『……………………』
四条貴音
『成程、相手の要求は金銭という訳ですね?』
我那覇響
「いや、まだ続きがあるんだ」
我那覇響
【や、やよいかー?何なのさ?あ、判った。伊織のイタズラの片棒担がされてるな?】
我那覇響
ζ*'ヮ')ζ<【 こ、今回はいおりちゃんじゃないですー、じゃ、じゃなくて、じゃねえ!】
我那覇響
【あーはいはい、で、小銭って、事務所のお茶請けでも買うのか?】
我那覇響
ζ*'ヮ')ζ<【うし、うしをつかう】
我那覇響
【……………はい?】
我那覇響
ζ*'ヮ')ζ<【ま、間違えましたー!うし、うしをかう、ですー!】
我那覇響
【………生きてる牛?それとも牛肉?】
四条貴音
『牛肉ですと!?』
我那覇響
あ、食いついた。
四条貴音
『それはもしや、二階堂千鶴の実家に入荷したという、幻の飛騨牛ロース3000gの事では!?』
萩原雪歩
『知っておるのか雷電!』
我那覇響
「あ、雪歩もそこに居るんだ」
四条貴音
『その道40年の職人が、最高の素材を丹精込めて熟成させた、宝石の如き逸品であるとか』
萩原雪歩
『凄いですぅ!日本ではなかなかお目にかかれない、ドライエイジング加工の』
萩原雪歩
『その色と輝きは紅玉の如しと言われ、火を通せばたちまち香り立つ至高の』
四条貴音
『何と素晴らしき巡り併せ。それは是非とも炭火で頂きたいものですね』
萩原雪歩
『炭は勿論備長炭を使うとして、ただその管理はなかなか難しいんですぅ。そもそも炭は生き物』
四条貴音
『ささ、何を愚図愚図としているのです響、一刻も早く指定の口座に肉代を振り込むのです』
萩原雪歩
『野菜と肉のバランスはちゃんと気を遣わないと、消化吸収に良くないから折角の良いお肉が』
四条貴音
『やっきにく!やっきにく!やっきにく!やっきにく!』
萩原雪歩
『カ・ル・ビ!カ・ル・ビ!カ・ル・ビ!カ・ル・ビ!』
我那覇響
…………………。(プチ、ツーツーツー)
我那覇響
(テルテルテル)「あーもしもし千鶴?さっき言ってたあれ、さっさと誰かに売っちゃって良いぞ」
我那覇響
「あと……あ、もう律子に伝えてくれた?手加減一切必要ないからって」
我那覇響
「じゃあよろしく。あ、後でやよいんちに配達しておいて。普通の焼肉用のやつ」
(台詞数: 43)