二階堂千鶴
ごきげんようお客人。昨日はよく眠れまして?
秋月律子
おはようございます。ええ、おかげさまでぐっすりと。
二階堂千鶴
今時無宿渡世とは古風ですこと。泊めたわたくしが言えることでもありませんけどね。
秋月律子
物好きを笑われるのは承知の上ですよ。お礼に水汲みなどさせていただきましょうか?
二階堂千鶴
あいにくここは上水道ですの。恩義なら別のやり方でお返し願いますわ。
萩原雪歩
え、ええ!?お金を返せって。一体何のことなんですか?
二階堂千鶴
お忘れになっては困りますわ、ほらこの書類。きちんとあなたの署名入りですわよ。
萩原雪歩
たしかにこれは私の字ですけど。でもこれはお父さんに頼まれて書いたもので…
二階堂千鶴
世も末ですわね、実の父親が娘を騙して借金を肩代わりさせるとは。同情致しますわ。
二階堂千鶴
ま、それはさておき。どのような形で返済いただくか、ご相談の必要がありそうですわね。
萩原雪歩
ま、待って下さい!私は何も知らないんですよ?なのに…
二階堂千鶴
お気の毒ですがわたくしには関係の無い事です。家族会議でもお開きになられてはいかがですこと?
萩原雪歩
…始めからお父さんを騙すつもりだったんですね。貸す時はあんなににこやかだった癖に。
二階堂千鶴
何の話ですの。言っておきますけどね、銀行の相場より遥かに低い利息で融資したんですのよ。
二階堂千鶴
真面目に返済いただければこんな事にならずに済んだのに。賭博などに手を出すからですわ。
萩原雪歩
よ、よくもぬけぬけと。賭場に誘ったのはあなたの癖に!
二階堂千鶴
おあいにくさま。最近の流行りの言葉で言えばそれこそ自己責任というやつですわ。
二階堂千鶴
どうやらすぐの返済は無理のようですわね。仕方ありません、あなたが女性で良かったですわ。
萩原雪歩
何ですかこの人たち、まさか…や、やめて下さい!離して!
二階堂千鶴
どうもご苦労様。念の為お付き合いいただきましたが、護衛の必要は無かったですわね。
秋月律子
お疲れ様です…いつも、こんなシノギを?
二階堂千鶴
まさか。あくまでも例外ですわ、普段はまっとうな金融業やリースを営んでおりますわよ。
秋月律子
にしては随分手回しが良かったようにも見えましたがね。
二階堂千鶴
こんなご時世ですもの。時折少々強引な手を使う事もありますわ。
二階堂千鶴
ですが、大勢の人間の身がわたくしの肩にかかっているのです。やむを得ないと思っております。
秋月律子
身内を守る為ならその他の人間を騙して犠牲にしてもなんとも思わない、と?
二階堂千鶴
…ええ、そう決めたのです。ここを父から受け継いだ時に。
二階堂千鶴
わたくしの身内だけは、絶対に守ってみせる。飢えたり貧窮するような目には合わせない。
二階堂千鶴
卑怯な振る舞いだろうが、非合法な手段であろうが。身内の為になるのなら、どんな事だって。
秋月律子
…汚れた手で守られて、それであなたの身内は喜びますか?
二階堂千鶴
さあ?そこは人それぞれではないですの。あくまでもわたくしがそうしたくてやってるだけですわ。
秋月律子
…お世話になりました。そろそろ別の土地に向かおうかと。
二階堂千鶴
そうですの、それではお気を付けて。
二階堂千鶴
…千川さんによろしくお伝え下さいな。魅梨音組に手を出せばただでは済まない、とね。
秋月律子
え、気付いてたんですか…じゃない、何の話で?
二階堂千鶴
言ったではありませんの、今どき無宿渡世などありえないとね。調べるのは簡単でしたわ。
秋月律子
でしょうね。だから私は反対だったんですよ、魅梨音の二階堂を甘く見るなって。
秋月律子
あの人も変な所で時代がかってると言うか、おふざけが好きなんですから。
二階堂千鶴
あなたのお芝居、なかなか楽しめましたわよ。この渡世、たまにはお遊びも必要ですわ。
秋月律子
…それで、どうするんです。本格的にウチと事を構えるつもりですか?勝ち目はありませんよ。
二階堂千鶴
どうでしょうね?やってみなくては分かりませんわよ。
二階堂千鶴
言ったでしょう?わたくしは身内の為なら何でも致します。そしてそれは、わたくしだけでは無い。
秋月律子
そうですか。ではそのように千川にはお伝えします。それでは。
秋月律子
…最後に1つだけ。二階堂さん。あなた、辛くは無いんですか、そんな生き方。
二階堂千鶴
さあ。この組を引き継いだ時、もうそんな感情は捨ててきましたわね。
秋月律子
ウチの千川は手向かう相手に容赦はしません。楽には死ねませんよ。
二階堂千鶴
あら、わたくしも身内に手を出す人は許しませんの。わたくし達、気が合いそうですわね。
秋月律子
…失礼します。私が言うのもなんですが、どうかお達者で。
二階堂千鶴
ええ、それでは…やはり、来るのですね、あの鬼悪魔。
二階堂千鶴
来るなら来てみなさいな。わたくしの組は絶対に守ってみせますわ…
(台詞数: 50)