幸せの証
BGM
ハミングロード
脚本家
親衛隊
投稿日時
2015-12-24 22:40:11

脚本家コメント
雪歩誕生日おめでとう。
心からおめでとう。

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萩原雪歩
街は絶賛クリスマス風景。そして同時に、私の誕生日でもあります。
萩原雪歩
夕方、仕事帰りに寄った事務所では、みんなが私の為にサプライズパーティを開いてくれました。
萩原雪歩
それはもう、私なんかには勿体ないくらい盛大に。
萩原雪歩
たくさんの『おめでとう』を貰ったので、
萩原雪歩
返しきれない程の『ありがとう』を言いました。
萩原雪歩
幸せに満ちた心は笑顔を咲かせて、輝いた思い出を作り出してくれるんです。
萩原雪歩
(思い出……)
萩原雪歩
残念ながら、そのパーティにプロデューサーの姿はありませんでした。
萩原雪歩
どうやら打ち合わせが長引いているようです。
萩原雪歩
「お仕事なら仕方ないよね……」
萩原雪歩
そうやって、みんなに自分を演じてパーティは幕を閉じました。
萩原雪歩
外は星が瞬く夜。真っ暗な事務所に、聞き慣れた携帯の音楽が響きます。
萩原雪歩
「プロ……デューサー?」
萩原雪歩
潤んだ目を擦って、膝を正し、恐る恐る通話ボタンを押しました。
萩原雪歩
『雪歩、遅れてすまない。すぐに行くから待っててくれるか。』
萩原雪歩
一体、さっきまでの弱虫はどこへやら。
萩原雪歩
その音を聞いた時、涙を零す暗雲はどこかへ去っていきました。
萩原雪歩
『今、街の広場にいるんです。』なんて嘘までついて。
萩原雪歩
私、萩原雪歩は寒空の下へと繰り出す事になったのです。
萩原雪歩
――――――
萩原雪歩
広場に訪れた私は、精神的に参っていました。
萩原雪歩
何故なら、チラと近くのカップルを見やれば――
萩原雪歩
(はぅっ!)
萩原雪歩
恥ずかしくて、こうやって目を逸らしてしまうんです。
萩原雪歩
何回も何回も逸らし続けていたら、広場から離れたベンチで、ひとりきりでした。
萩原雪歩
「ぐすっ。私には、ここがお似合いなんですぅ……」
萩原雪歩
「……どうしようかな」
萩原雪歩
頬は凍てつく空気にも負けないくらい熱いまま。
萩原雪歩
「恋人……かぁ。私にも……」
萩原雪歩
私にも……いつか出来たら、さっきの人たちみたいに、雰囲気に流されるままあんな風に唇を……
萩原雪歩
はっ!
萩原雪歩
頭を振って、悶々とした思考を忘れようとします。
萩原雪歩
「ん、あれ?」
萩原雪歩
買った覚えのない缶コーヒーが、手の中に握られてい――
萩原雪歩
「あわわっ! い、いつからそこにいたんですかぁ!」
萩原雪歩
隣には、髪をボサボサにした待ち人が座っていました。
萩原雪歩
「こ、恋人かって呟いてた所? そそそれって……一番ダメなところですぅ!」
萩原雪歩
突然の事態にパニックになる私。彼は、そんな私を見て嬉しそうに笑っていました。
萩原雪歩
そして……『おめでとう』と一緒に誕生日のプレゼントを渡してくれたんです。
萩原雪歩
「あ……」
萩原雪歩
「あの、ありがとうございます。この為に、わざわざ走って来てくれたんですよね……」
萩原雪歩
「ふふっ。おかげで勇気……貰えました。じゃあ……そのですね、お返しに」
萩原雪歩
「ネ、ネクタイが曲がってますから……その、わ、私が直していいです……か?」
萩原雪歩
震える両手は、襟元を通り過ぎて首元に回って――
萩原雪歩
そっと、抱きしめてみる。
萩原雪歩
「……ありがとうございました」
萩原雪歩
最高の『おめでとう』のお返しに、最高の『ありがとう』を。
萩原雪歩
咲いた笑顔は幸せの証。
萩原雪歩
この温かな涙も一緒に、輝いた思い出になれますように。
萩原雪歩
どこまでも澄んだ聖なる夜に、願ってみました。

(台詞数: 50)