萩原雪歩
孤独とは何か。
萩原雪歩
そんな話を授業で聴いたのは今日の昼過ぎで、思い出したのがその日の夜。
萩原雪歩
つまり、今。
萩原雪歩
昼まで残っていた夏は、陽と一緒に逃げ出してしまっていた。
萩原雪歩
「この服はちょっと寒かったかな」
萩原雪歩
とうとう天気予報からも見放されてしまった。こんな日は早く帰ってしまおう。
萩原雪歩
独りのままで家に着き、荷物を置いたその時、携帯の留守電に気付いた。
菊地真
「あ、もしもし雪歩!今暇?暇だよね!これ聴いたらすぐにこっち来てね!」
菊地真
「ちなみにこのメッセージは再生が終了すると自動的に止ま
萩原雪歩
手動で止めた。
萩原雪歩
この声の主は私の親友で、今は遠いところに住んでいる。そしていつも突然現れる。
萩原雪歩
帰ったところではあるが親友からのお呼び出し。
萩原雪歩
一息つきたいのを我慢し、軽くおやつを食べシャワーを浴び少し昼寝するとすぐに家を飛び出した。
萩原雪歩
私は駅で切符を買い、駅で電車を待っている間、親友との会話を思い出していた。
菊地真
「はあ……苦悩苦悩……」
萩原雪歩
「どうしたの真ちゃん」
菊地真
「あ、雪歩。九州の県の九つ目がどうしても思い出せなくて……」
萩原雪歩
「ま、真ちゃん?」
菊地真
「八つは思い出せたのに……」
萩原雪歩
「真ちゃん!!」
萩原雪歩
そんな昔話に少し笑いながら電車を舞っていると。
萩原雪歩
再び携帯電話の着信音が鳴った。
菊地真
「雪歩雪歩!テレビを見る時は電源を着けると良いよ!」
萩原雪歩
これは着信音。
菊地真
「雪歩雪歩!今年ってもう一年も無いんだよ!光陰矢の如し!」
萩原雪歩
これが本物。
萩原雪歩
「もしもし真ちゃん、今そっち向かってるよ」
菊地真
「そうなんだ。夕飯までにはこれる?」
萩原雪歩
「え。もう夕飯時なのに?」
菊地真
「元日の」
萩原雪歩
スパン。
萩原雪歩
「それまでには着けると思うよ。逆に早く着き過ぎちゃうかもしれないけど」
菊地真
「それは何より!あ、そろそろ潮時だから電話切るよ」ズバッ
萩原雪歩
騒がしい子だなあ。と懐かしくなっている間に、線路の向こうからガタン、ゴトンと音を立てながら
萩原雪歩
真ちゃんがやってきた。
菊地真
「ふう、待った?」
萩原雪歩
勿論、私の世界でも線路の上を走るのは電車であるし、走るときにガタンゴトンと発する女の子など
菊地真
「ガタンゴトン」
萩原雪歩
いた。
萩原雪歩
昔から思いもしないようなことをする子だったが、ここまで芸達者では無かった。
菊地真
「びっくりした?驚かせようと思ってさ。」
萩原雪歩
彼女はそう言って変身を解くと、おもむろに口を開いて閉じた。
萩原雪歩
「ま、まあとりあえず荷物おろしたら?」
萩原雪歩
妙案だね。と言いながら背中に背負っている重責を三枚に下すと、彼女はこう言った。
菊地真
「最近、元気な雪歩を見てないと思ってさ」
萩原雪歩
「真ちゃん……」
萩原雪歩
「そりゃ最近会ってないからね」
菊地真
「なるほど!納得!」
萩原雪歩
そう叫びながら腹鼓を打ち嬉しそうに笑った。その時の風は心地よく、私の頬をなでるように優しく
萩原雪歩
真ちゃんが去っていった。
(台詞数: 50)