萩原雪歩
……それで百合子ちゃん?なんでわざわざ、ステージ裏の暗がりに来たのかな?
萩原雪歩
お花見で大はしゃぎしてる男の人からは離れてるけど……暗くてちょっと怖いよ。
七尾百合子
ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました雪歩さん。こういうスポットだからできることなんです。
七尾百合子
実は!今から、この櫻の樹の根元を掘り起こしてみたいと思うんです。
萩原雪歩
……ごめん百合子ちゃん、もう一回言ってもらえるかな?よく理解できなかったんだ!
七尾百合子
ですから、この咲き誇る櫻の、根元を掘り起こすんです。
七尾百合子
私達もアイドル、公の場に穴を掘るところを見られるわけにいきません。TPOをわきまえないと。
萩原雪歩
うん。TPO云々の前に、根元を掘り起こすこと自体がどうかと思うんだけど!
七尾百合子
雪歩さん。聞いたことがありませんか、こんなお話を。
七尾百合子
なぜ櫻は、美しい花を咲かせるのか。そしてときに、その美しさに言い難い不安を感じるのか……
七尾百合子
櫻の樹の根元には、醜さの境地とも言える屍体が埋まっていて、櫻がそれを吸い上げているのでは?
七尾百合子
……どうしてもそれを確かめてみたくて。それであの、雪歩さんにご協力いただきたく。
萩原雪歩
百合子ちゃん、またそういう小説の影響を受けたんだね。
宮尾美也
そうなんですか〜。百合子ちゃんの計画は、小説から発想したんですね〜。
萩原雪歩
って、美也ちゃんまで巻き込んでるの?呆れちゃうなあ。
宮尾美也
いえ〜、私は自主的に参加したんですよ〜。百合子ちゃんがブツブツ話してた計画に。
宮尾美也
こんなに桜が綺麗に咲いてるのに、屍体さんは埋まりっぱなし。お花見できないんですよね〜。
宮尾美也
ですから、掘り出してあげて、一緒にお弁当を食べたくて〜。御重で用意したんですよ〜。
萩原雪歩
美也ちゃんが優しいのはよく分かったけど、百合子ちゃんへの態度も屍体への反応もおかしいよ。
七尾百合子
とにかく、せっかくだから出来ることはやってみましょう!スコップも三本用意しましたし。
萩原雪歩
……どうせ何を言っても止めそうにないよね。わかったよ。
宮尾美也
穴掘りの先生の雪歩さんが一緒なら、百人力です〜。
萩原雪歩
(ザクッザクッザクッザクッ)……ところで、百合子ちゃん?
七尾百合子
(ザクッ……ザクッ……)な……なんでしょうか雪歩さん?私、もう腕がパンパンで……
宮尾美也
(ざくぅ、ざくぅ)口では色々言ってますけど、雪歩さん、ノリノリで掘ってますね〜。
萩原雪歩
(ザクッザクッザクッザクッ)うん、いつものクセでね。……いや、その話じゃなくて。
萩原雪歩
(ザクッザクッザクッザクッ)あの、百合子ちゃん。もしもの話だけど……
萩原雪歩
(ザクッザクッザクッザクッ)本当に屍体が出てきたら、どうするのかなって。
七尾百合子
(ザクッ……ザクッ……)え……?
萩原雪歩
(ザクッザクッザクッザクッ)警察に通報しないといけないよね?事務所にも説明しないと。
七尾百合子
(ザクッ……)もしかして私達、とんでもないことをしているんでしょうか?
萩原雪歩
うん。だからもう止めて、埋め戻そうよ、誰かに見られちゃう前に。
宮尾美也
(ざくぅ、ざくぅ)ええっ〜?もう少し頑張りましょう。こんなのが出てきましたから〜。
七尾百合子
……み、美也さん。手に持ってる、その白い欠片は、一体……
宮尾美也
スコップが当たって割れちゃいましたけど、元々は丸い形だったみたいですね〜。
七尾百合子
そ、それはまさか。しゃ、しゃれこうべ……
萩原雪歩
……
萩原雪歩
……落ち着いて百合子ちゃん。これ、お茶碗の破片だよ。
七尾百合子
……お茶碗、ですか。ビックリしました……
宮尾美也
(ざくぅ、ざくぅ)お茶碗が出てきたのは、屍体さんはご飯の途中だったってことですかね〜。
宮尾美也
(ざくぅ、ざくぅ)だから、屍体さんも掘り出して、謝ってからお弁当を食べてもらわないと〜。
七尾百合子
美也さん、もう屍体の話はいいですから!掘るのもストップしてください!
(台詞数: 42)