萩原雪歩
『言葉には魔法が込められている』
萩原雪歩
お母さんが私によく教えてくれたことです
萩原雪歩
幼いころはその意味がわからなかったけど、今ではわかる気がします
萩原雪歩
私は自他共に認めるネガティブな性格ですが、昔はそれほどでもなかったんですよ
萩原雪歩
むしろ、ハキハキと発言することが多かったように思えます
萩原雪歩
今思えば、その発言で周りの人をたくさん傷つけてしまったのかもしれません……
萩原雪歩
傷つけている自覚はありませんでしたから……
萩原雪歩
そんな私が小学生の頃、親友だった女の子がいました
萩原雪歩
何をするにも私たちは一緒、ベストパートナーと言える子でした
萩原雪歩
しかし、私たちはある日、大喧嘩をしてしまいました……
萩原雪歩
原因は覚えてないです……些細なことだったと思うんですが……
萩原雪歩
でも、あの時私があの子にぶつけた言葉は……今でもハッキリと覚えています……
萩原雪歩
「○○ちゃんなんか、死んじゃえばいいんだ!!」
萩原雪歩
その時は後悔しませんでした……それくらい興奮していましたから……
萩原雪歩
怒りも収まってきた1週間後、いつものように学校に行こうとすると
萩原雪歩
あの子は……交通事故で本当に亡くなってしまいました……
萩原雪歩
あの子の死に私は関与していないのですが、ものすごい罪悪感が押し寄せてきました
萩原雪歩
私が安易に「死んじゃえ」なんて言ったから……
萩原雪歩
その時初めて、言葉には魔法が込められていることを知りました……
萩原雪歩
それからというもの、私は発言するのを酷く怖がるようになりました……
萩原雪歩
またあの子のように傷つけてしまうかもしれない……そう思うと、声が出なかったんです……
萩原雪歩
いつしか、私の周りに笑い声も人影も無くなりました
萩原雪歩
もうずっとこのままなのかなぁ……そう思っていた時
萩原雪歩
「彼」が現れたんです
萩原雪歩
「彼」がどこの誰かは知りませんでした……というより、私は「彼」に興味ありませんでしたから
萩原雪歩
でも、「彼」は私を興味津津に見ていました
萩原雪歩
友達がいない私を憐れんでいるのかな……?そう思うと、腹が立ってきて
萩原雪歩
「どうして私のことを見てるの!?私がおしゃべりすると、みんなが不幸になる!!」
萩原雪歩
「お願いだから、もう私に付きまとわないで!!」思わず怒鳴ってしまいました……
萩原雪歩
理由も知らない相手に理不尽に怒鳴ってしまって、最低だと思ってます……
萩原雪歩
でも「彼」は私を抱きしめて、こう言ったんです
菊地真
「大丈夫だよ……キミの言葉は怖くなんかないよ」
菊地真
「言葉には魔法が込められているって話は、ボクも聞いたことがあるんだ」
菊地真
「『魔法』って言うと怖いイメージがあるけど、良い魔法もあるんだよ」
菊地真
「挨拶、感謝、励まし……みんな良い魔法が使えるんだ」
菊地真
「キミの言葉にはそんな魔法が似合うと思うよ」
萩原雪歩
私は声をあげて泣いていました……別に、男の子が怖くて泣いてるんじゃなくて……
萩原雪歩
私が背負っていた重荷を「彼」が下ろしてくれた気がして……安心して……
萩原雪歩
昔のようなハキハキしたしゃべりはできなくなっちゃったけど
萩原雪歩
またみんなとおしゃべりができるようになりました
萩原雪歩
改めてお礼が言いたかったけど、「彼」はもう見つかりませんでした
萩原雪歩
今の私がいるのは、名も知らぬ「彼」の存在があるからなんです
萩原雪歩
この世界で、「彼」がまだ生きているのなら、ひとこと言いたい
萩原雪歩
「とっておきの言葉の魔法、教えてくれて『ありがとう』!」
菊地真
……その「彼」、案外近くにいるかもしれないよ、雪歩?
(台詞数: 45)