萩原雪歩
今日はクリスマスイブで、私の誕生日。
萩原雪歩
プロデューサーが色々手を回してくれたらしく、私のお仕事はバースデーライブだけでした。
萩原雪歩
そのまま劇場でパーティーをする事になりました!
萩原雪歩
私たちはアイドルだから、今日もお仕事でパーティーに参加できない子もいますが…。
萩原雪歩
お仕事のある子からは、お祝いのメールが届いてます♪
萩原雪歩
ただ…。
萩原雪歩
「四条さん…どうしちゃったんだろう…」
萩原雪歩
四条さんだけは音沙汰無しでした。
萩原雪歩
ホワイトボードを見ると、四条さんはお仕事になっています。
萩原雪歩
お仕事が大変で、連絡をする暇がないのならいいのですが、もし事故にあっていたら…。
萩原雪歩
「っ…!いけないいけない…。せっかく皆がお祝いしてくれるのに暗い顔なんてしてたら…」
萩原雪歩
にこっと顔を作って、リコッタの皆が作ってくれたケーキを一口。
萩原雪歩
「ん…、おいしい♪」
萩原雪歩
心に引っかかりはあったけど、今は皆がお祝いしてくれるから、笑顔で答えないと。
萩原雪歩
そうやって気持ちを切り替えようとしたときでした。
四条貴音
「ゆ…雪歩っ!」
萩原雪歩
「ひうっ!?」
萩原雪歩
扉を開け放って、まるで転がり込むように四条さんが部屋に入ってきました。
四条貴音
「ぱ…パーティーには間に合ったのですね…?」
萩原雪歩
ぜーはー、ぜーはーと肩で息をする四条さんの姿は、いつもの神秘的なものとはかけ離れています。
萩原雪歩
「四条さん、とりあえずこれを飲んで落ち着いてください…!」
四条貴音
「あ、ありがとうございます…」
萩原雪歩
「それで…四条さん。そんなに慌てて何があったんですか?」
萩原雪歩
渡した水を飲んで一息ついたらしく、いつもの調子で四条さんは答えます。
四条貴音
「仕事を終え、ここまで全力で走って参りました」
四条貴音
「当初はタクシーを利用するはずでしたが、渋滞に巻き込まれてしまい…」
萩原雪歩
そうまでしてパーティーに参加したかったんでしょうか…?
四条貴音
「いいえ、わたくしは雪歩に直接祝いの言葉を伝えたかったのです」
四条貴音
「電話でもなく、メールでもなく、顔を合わせて…です」
四条貴音
「誕生日おめでとうございます♪」
萩原雪歩
わたくしを孤独から救ってくれた雪歩──そう言う四条さんの姿は髪も服も乱れたままで。
萩原雪歩
そんなにも私のことを思ってくれたのかと、嬉しくて。
四条貴音
「雪歩…泣いているのですか?」
萩原雪歩
笑っているはずなのに、目の端からは涙がこぼれていました。四条さんが驚いた顔をしています。
萩原雪歩
「お…おかしいですね…。涙が…嬉しいのに止まらないですぅ…」
四条貴音
「…雪歩が落ち着いた頃に、改めて話をしに戻ってきます」
萩原雪歩
頭をぽん、と撫でて、そのまま四条さんは皆の方へと向かっていきました。
萩原雪歩
四条さんは、皆に指摘されて自分の姿にようやく気づいたらしく、髪や衣服を慌てて直しています。
萩原雪歩
私は目の端をそっと拭って。
萩原雪歩
「劇場の皆、プロデューサー、小鳥さん、社長、本当にありがとうございますますぅ♪」
萩原雪歩
今の、この嬉しい気持ちなら、お礼の言葉を何度も言えます。
萩原雪歩
「皆さん、本当にありがとうございますますぅ♪」
萩原雪歩
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萩原雪歩
時を見計らって帰ってきた四条さんの…。
萩原雪歩
手に持ったお皿に料理が山のように積まれていて、涙が出るほど笑ったのは別の話ですぅ。
(台詞数: 45)