水の味不知(地の文注意)
BGM
TOWN_RMX
脚本家
Կիշիրա
投稿日時
2014-07-04 12:17:21

脚本家コメント
0,脚本家コメントになんか書いてないとなんかやだって方が多いみたいなので、今度からなんか書くことにします。
1,今回地の文ってやつに挑戦しましたが、こういう風に台詞以外を書く手法は難しいですね。温かい目でご覧下さい。
2,ちょいちょい百合百合描写があるので、苦手な方はご注意下さい。

コメントを残す
萩原雪歩
夜だった。
萩原雪歩
いつも通りの一日の、いつも通りの失敗から、いつも通りの逃避の為に。
萩原雪歩
私はまた、ここに来ていた。
萩原雪歩
橋の上から水を見て、映っているはずの自分に問いかけてみても……
萩原雪歩
帰ってくる言葉はやはり逃避だった。もっとも、今は水の中の自分は見えない。
萩原雪歩
夜だった。
萩原雪歩
自分さえ暗くて見えない私は、どこに逃げればいいんだろう。
萩原雪歩
掘る地面さえ無くなった私は、どこに隠れれば良いんだろう。
萩原雪歩
いっそこのまま、水と一つになるのも、いいのかもしれない。
菊地真
「あ、雪歩やっぱりここにいたんだね」
萩原雪歩
友達の声が聞こえた。私はランバダを踊るのを止めて振り向いた。
萩原雪歩
「あ、真ちゃん。どうしたの?もう、事務所に帰ったんじゃ?」
菊地真
「……雪歩」
萩原雪歩
いつもそう。この子に私のつくり笑顔は通じなかった。彼女は三点倒立を止め、近づいて来る。
萩原雪歩
「ごめん、来ないで」
萩原雪歩
否定だった。私はこうでもしなければ震えてしまいそうだった。
萩原雪歩
震えてしまえば気づかれてしまう、そして何より人差し指で支えているホウキも落としてしまう。
菊地真
「雪歩、もうちょっと信用してくれても良いじゃないか」
萩原雪歩
彼女は早足で迫ってくる、間にある壁は彼女には見えてないんだろうか?
萩原雪歩
最初あった52kmの距離は、もう半分以下まで縮まっていた。
萩原雪歩
「ダメ……!」
萩原雪歩
私は走った。捕まったら何かを失ってしまう気がして、振り向きもせず、できるだけ遠くへ。
萩原雪歩
具体的に言うと網走くらいまで。
菊地真
「ふふ、雪歩……やっぱりいつも逃げるところは同じなんだね」
萩原雪歩
……結局、全部見透かされていた。私はもう我慢できなくて、
萩原雪歩
くわえていた35本のかいわれも今はもう、全て落としてしまった。
菊地真
「いいんだよ、雪歩。何度逃げたって、悪いのはそこじゃないんだ。雪歩が悪いのはね……」
萩原雪歩
風に舞うかいわれに囲まれて、彼女は両目の眼帯を外した。続く言葉は……
菊地真
「んく……んく……」
萩原雪歩
彼女には、喋り疲れると話の途中でもオレンジジュースを飲む癖があった。
菊地真
「ぷは…あ、どこまで話したっけ」
萩原雪歩
さらに彼女には、話したことがオレンジジュースでリセットされる癖があった。
菊地真
「雪歩、やっぱり合成洗剤じゃあんまり汚れは落ちないよ」
萩原雪歩
「真ちゃん……」
萩原雪歩
流石に意味がわからなかった。こんな時、私はとりあえず相手の名前を呼ぶ癖があった。
菊地真
「雪歩……」
萩原雪歩
ちなみに彼女にも同じ癖があった。
萩原雪歩
風にのって揺蕩うかいわれの中、私たちはあと5~6回お互いに名前を呼びあった。
萩原雪歩
……
萩原雪歩
かいわれの滞空時間が意外と長い。
菊地真
「いや、そうじゃ無かった。雪歩、逃げる事は別に悪んく……んく……」
萩原雪歩
今日は休憩のペースが早かった。
菊地真
「ぷは……って話が進まないなもう! 」
萩原雪歩
全くである。
菊地真
「もうコマ数的に要約するけど、そんなキートン山田みたいな口調で一人考え込むのは良くないよ」
萩原雪歩
「それじゃあ……真ちゃんが私をどうにかしてくれるの?」
菊地真
「……こんなことくらいしか出来ないけど……」
萩原雪歩
次の瞬間水が跳ね、今だ居残るかいわれの中、口にできる言葉は無く
萩原雪歩
さっきまでのかいわれの苦味を上塗るように、口に広がる
萩原雪歩
オレンジジュース。

(台詞数: 50)