高槻やよい
うっうー!屋上は風が強いけど、やっぱり気持ちいいですー!
高槻やよい
コスモスさんも、事務所の中ばっかりじゃ滅入っちゃいますもんね!
高槻やよい
ていうかコスモスさん、ついこの前まではもっと伸びてた様な気がするけど………。
高槻やよい
でも縮むわけなんか無いから、気のせいかなーって。ね?コスモスさん!
高槻やよい
伊織ちゃん、コスモスさんに『お話聞かせてあげて』って言ってたけど、どうしてだろ?
高槻やよい
私の話なら何でも良いからって言ってたけど………。
高槻やよい
………伊織ちゃん、すっごく真剣な顔してたから、きっと大事な事なんだよね?
高槻やよい
でもでも、どんなお話したら良いんだろー?
高槻やよい
……………。
高槻やよい
じゃあコスモスさん、私のちょっとだけ昔の話をするね?
高槻やよい
………あの日も台風の後で風が強くて、いろんな物が飛ばされてて
高槻やよい
箒とか看板とか自転車とか、ウチの生垣に刺さってたの。
高槻やよい
ビックリでしょ?自転車まで飛ばされて来たんだよ?でもね、もっと驚いたのは………
高槻やよい
なんと、女の人の足が二本、生垣からにょっきり生えてたんですー!!
高槻やよい
あ、信じてないなー?ホントだったんだからー!
高槻やよい
確かに飛ばされて来た訳じゃなかったんだけど………。
高槻やよい
その人、台風の間居酒屋さんで夜通し飲んでて、朝になって雨が止んで、帰ろうとしたら………
高槻やよい
途中で眠くなっちゃって、生垣に寄りかかってそのまま埋もれて寝ちゃったんだって!
高槻やよい
その人近所に独り暮らししてた学生さんだったの。すっごく綺麗な人でね………
高槻やよい
それで、すっごく面白い人だったの!いっつも駄洒落ばっかり言ってたんだよ!
高槻やよい
その日からウチの家族と仲良くなって、私たち兄弟と遊んでくれたり、お母さんとお料理したり
高槻やよい
お父さんとお酒飲んで、駄洒落合戦したり………楽しかったなー。
高槻やよい
だけどね、ある日突然そのお姉さん、引っ越す事になっちゃったんだ………。
高槻やよい
学校辞めてお仕事する事になったんだって。何のお仕事だったとおもう?
高槻やよい
なんと、ファッションモデルさん!すごく納得しちゃった!だってお姉さん、とってもとっても……
高槻やよい
綺麗な人、だったから。
高槻やよい
だけど私、大学通いながらでも、お仕事できるんじゃないかなーって思ったんだ。
高槻やよい
だから聞いてみたの。「どうして大学辞めて、引っ越しまでしちゃうんですかー!」って。
高槻やよい
そしたらね、ご両親に『そんな浮わついた仕事は許さない』って反対されちゃったんだって。
高槻やよい
『それでもやるなら勘当だー!』って。だから仕送りも無くなっちゃうし、学費も払えないから……
高槻やよい
私、「そんなにまでしてモデルさんやりたいんですかー!」って、聞いたの。
高槻やよい
………泣きながら、聞いたの。だって、別れるのがすっごく悲しかったから。
高槻やよい
そしたらお姉さん、困った顔してた。………そしてね、私に言ったの。
高槻やよい
『例えばやよいちゃんは、この先ずっと家族と仲良く暮らして行くと思うの。』
高槻やよい
『でも私はね、遠くへと離れて生きてくの。生まれた所から、遠くへ、少しでも、遠くへ。』
高槻やよい
『私の名前の通り。枝から離れた木の葉は風に運ばれて、ゆらりゆらりと飛んで行くの。』
高槻やよい
『そして何処か知らない街にひらりと落ちて、やがてはそこで朽ちてゆく。それが私。』
高槻やよい
『実を言えば、そんなにモデルの仕事をやりたい訳じゃ無いの。ただ、その風に乗れば………』
高槻やよい
『遠くへ飛んで行ける、そう思ったの。』
高槻やよい
『これで私は、もう家にはかえでない………ふふっ。』
高槻やよい
そう言って、お姉さんは行っちゃったの。だけど………
高槻やよい
知ってる?風って通り道があってね、同じ季節に、同じ方角に風が吹くんだって。
高槻やよい
だから、私もアイドルになって頑張ってたら、いつかきっと………。
高槻やよい
………なーんて、えへへー。こんな話、コスモスさんには退屈だった?
高槻やよい
って、わわー!すごい風ですー!!
高槻やよい
ぅぅー、髪の毛ぐしゃぐしゃですー。飛んできた葉っぱまで付いちゃいましたー。
高槻やよい
………この葉っぱ……………。
高槻やよい
………………。
高槻やよい
あれ?コスモスさん……………
(台詞数: 49)