高槻やよい
……あ、人間さんがやって来たみたいです!
ジュリア
来たか、身の程知らずが……返り討ちにして、あたしの専属ミキサーにでもしてやるぜ!
周防桃子
……ここが鬼ヶ島ね。出迎え、ありがとう。
高槻やよい
こんにちは〜!鬼ヶ島名物、鬼饅頭をどうぞ!
ジュリア
ヤッコ。今日の奴はシリアスモードで来てるんだぜ。とっととギグ……じゃねえ、バトルしようぜ。
周防桃子
想像通り、鬼の世界は殺伐としてるんだね。
周防桃子
想像通り、鬼の世界は殺伐としてるんだね。……まあ、人間のほうも似た物だけど。
ジュリア
なんでえ。その年で、世間を恨んでますとでも言いたいのか?それとも中二病ってやつか?
周防桃子
まあ、それなりに鬼は憎んでるんだけどね。まあどうでもいい話かな?
ジュリア
あたしが言える口じゃないが、ひねてるなお前……
高槻やよい
あの、どうせこの後戦うんだから、今のうちにお話を聞いておきたいかな〜って。
周防桃子
……
周防桃子
……桃子の『お父さん』はね、鬼がさんざん嫌がらせをしたせいで、
周防桃子
……事業に失敗して蒸発したんだ。実家に借金残してね。
高槻やよい
え……?
周防桃子
だから、『お爺ちゃん』と『お婆ちゃん』は、長年かけて生活切り詰めて、返してたんだ。
周防桃子
……やっと返済が終わった頃には、もうすっかり老け込んでて。それでも息子は帰って来なくて……
周防桃子
……ああ、自分達は何一つ残す物が無いまま死んでいくのかなって、泣いてたんだって。
高槻やよい
えぅ〜。ジュリアさん、この子のお爺ちゃんお婆ちゃん、すごく寂しいです!私達鬼のせいで……
ジュリア
落ち着け、ヤッコ!全部こいつのハッタリかもしれねえだろ!
周防桃子
……やっぱり「天邪鬼」も、鬼の仲間なんだね。どうでもいいけど。
ジュリア
……話、続けろよ。あたしはともかくヤッコは聞きたがってる。それに、お前自身が出て来てねえ。
周防桃子
……毎日泣いて過ごしてた『お婆ちゃん』だけどね、
周防桃子
ある日川で洗濯してて、ああ、このまま転げ落ちて流されてもいいかなとか考えてたそうだけど……
周防桃子
見たんだ。上流から大きな桃が流されて来るのを。その中から生まれたのが、桃子。
ジュリア
なんだ。ならむしろ、絶望した夫婦の元に子供がやって来て、ハッピーじゃねえか。
周防桃子
……息子を失ってて、長年金策に苦しんでて、とっくに歪んでたんだろうね、二人とも。
周防桃子
……桃子の一番小さい時の記憶は、見世物小屋で『桃から生まれた奇跡の娘』とかやらされてる時。
周防桃子
ホルマリン漬けにした例の桃も飾って……お客さん、ヒソヒソ声と指差しと、おひねりをくれたよ。
周防桃子
……今なら分かるよ。貯金も無い老夫婦が、年金だけで子育てなんてできない。お金を稼がないと。
周防桃子
……桃子、学校もまともに通ってないし、旅の一座として旅から旅へだったよ。
高槻やよい
うう……悲しすぎます。きっと、お友達と遊んだことも無いんですよ。
ジュリア
お前……ひとりで乗り込んできた理由って、もしかして……
周防桃子
……友達の作り方なんて、桃子、知らないもん。ボディーガード雇えるほどのお金は無いし。
周防桃子
……見世物小屋行脚もね、そのうち飽きられちゃって。あれは嘘つきだとか週刊誌で書かれたり。
周防桃子
……桃のホルマリン漬けも、色が悪くなったし。潮時だって『お爺ちゃん』が言ってね。
周防桃子
……で、やることになったのが、この鬼退治ってわけ。取り戻した財宝の半分が報酬。
高槻やよい
そんな、無茶苦茶です!私達、誰が来ても勝っちゃってるのに!
周防桃子
……桃子だって、鬼に勝てるなんて思ってないよ。
ジュリア
……どういう意味だ?
周防桃子
鬼ヶ島に行って、行方不明になる。それってつまり……だよね。
周防桃子
しばらくすれば、家族の元に政府からの見舞金が入る。掛けてあった生命保険もね。
周防桃子
……口減らしと、最後のご奉公かな。『お爺ちゃん』と『お婆ちゃん』へのね。
周防桃子
……『お爺ちゃん』『お婆ちゃん』じゃなくて父と母、『お父さん』じゃなくお兄ちゃんだけどね。
ジュリア
……
高槻やよい
……ジュリアさん、もしかして泣いてますか?
ジュリア
……るせえ!ヤッコ、こいつと一緒に女王のところに殴り込むぞ!
ジュリア
勘違いするな!お前のためじゃねえ!不幸なやつを生む、歪んだ現実を破壊してやりたいだけだ!
周防桃子
……そのあと、同情した鬼達が一斉蜂起したおかげで、鬼ヶ島は陥落したよ。
周防桃子
……桃子の話は本当なのかって?……「桃子は女優だよ。」、それが答えかな?
(台詞数: 50)