争いを呼ぶ一言
BGM
求ム VS マイ・フューチャー
脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2017-11-18 09:28:05

脚本家コメント
※プロレスなので暴力注意

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七尾百合子
それは、私の不用意な一言が引き起こしてしまった争い…。
七尾百合子
「プロレスと空手って…どっちが強いんですか?」
七尾百合子
そんなこんなで戦いが始まった!
福田のり子
「プロレスは受けの格闘技!さあ、打ってきな!」
菊地真
「セイヤアァ!!!!!!!」
七尾百合子
のり子さんが胸を叩くと、盛大に肉が弾む。ぽよんぽよん。
七尾百合子
「ぽよんぽ…」のあたりで、その胸に真さんの正拳突きが突き刺さっていた。
七尾百合子
なので、実際に口から漏れたのは「打ってきのばあぁ」という意味不明の言葉でしかなく。
七尾百合子
…なんという、速くて、重くて、怨みのこもった拳。
七尾百合子
清貧を善しとする人でも、目の前で札束をビラビラされれば、流石に腹を立てる。
七尾百合子
持たざる者の鬱屈というものは、かくも根深いものなのか。
七尾百合子
しかし、必殺の拳から伝わる、憎むべき肉塊の感触に、真さんの顔が驚愕で歪んだ。
七尾百合子
人は、自分の物差しで他人を測るという。
七尾百合子
おそらく、真さんにはその手に触れるまで、想像すらつかなかったはず。
七尾百合子
自分と、相手の…圧倒的なまでの差に。
七尾百合子
数字にすれば、わずか12cm。自分の頼りないそれと比べても、微々たる差しかない。
七尾百合子
だけど、こう言い換えてみれば、どうだろう。上から7位、43位(タイ)と。
七尾百合子
大相撲で言えば、のり子さんは小結、真さんは十両である。
七尾百合子
つまり、同じ土俵にすら立っていない…!
七尾百合子
真さんは、力なくへたり込んだ。そして、恥も外聞も忘れて、慟哭した。
菊地真
おお、神よ!神よ!!神よ!!!あまりに不公平ではないですか!
菊地真
どうして、すべての人が平等に81cmを与えられていないのですか!?
菊地真
『ひんそーでひんにゅー(略)』に『そんなことないよ(震え声)』と何度言えばよいのですか!?
七尾百合子
哀れをもよおすその様子に、私も周囲を取り巻くギャラリーも、直視できず目を伏せるばかり。
七尾百合子
そんな真さんに手を差し伸べたのは、先程までの敵であった、のり子さんだった。
福田のり子
…あのね、大きさじゃないんだよ。
七尾百合子
どこかで聞いた台詞だけど、それはまさに至高の言葉。
七尾百合子
そして、のり子さんは、ギャラリーの中から二人を指さした。
七尾百合子
胸を指されて、恥じらいながら両腕で抱え込むようにかばう昴さん。可愛いっっ!!
七尾百合子
何故か悪い方の例にされてしまって、残念な顔になる歩さん。マイガー。
七尾百合子
なんだかよくわからないけど、理解できた!今、一瞬つながった!
七尾百合子
そうよ!そうです!大きさじゃないわ!大きさなんて関係ないんです!
七尾百合子
千早さんが、瑞希さんが、このみさんが、次々と立ち上がりながら、拍手する。
七尾百合子
一緒に拍手しようとした風花さんは、周囲から次々とパイをぶつけられ、クリームまみれで倒れた。
七尾百合子
スタンディングオベーション。温かい拍手に包まれた真さん。和解のハグをする二人。
七尾百合子
感動的に、平和的に。戦いは終わった。
七尾百合子
その光景を前にしながら、私は隣に立つ人に、また不用意なことを言ってみたのであった。
七尾百合子
「琴葉さん。プロレスとフェンシングって、どっちが強いですかね?」
福田のり子
「ウエスタン!ラリアット~!」
七尾百合子
ぱっか~ん!
七尾百合子
めっちゃいい音を立てた一撃で勢いよく縦回転しながら、回る世界の中で、私は思った。
七尾百合子
プロレス最強…!!

(台詞数: 42)