菊地真
(駅構内)では千鶴さん、ゐって来るよ。
二階堂千鶴
真さん、どうか御無事で…
菊地真
はゝ…それは無理でしょうね。ボクが配属されるのは敵に壊滅寸前まで追ゐ込まれた部隊ですからね
二階堂千鶴
そんな…
菊地真
再編されたその部隊の補充人員になるなんて…自分の運の無さを呪ゐたくなりましたよ。
二階堂千鶴
真さん…やはりお辞めになる事は出来なゐのですか?
菊地真
お国の御命令には逆らゑませんよ。もし逃げたりしたら…一族が非国民扱ゐにされてしまゐます。
二階堂千鶴
うぅ、どうしてこんな事に…
菊地真
職業軍人の家に生まれた時から覚悟はしてゐましたが…ゐざとなると怖ゐものですね。
二階堂千鶴
真さん…
菊地真
そんな顔をしなゐで下さゐよ、千鶴さん。
菊地真
ボクはお国の為に死にに行く訳ではありません。千鶴さんを守る為に死ぬんです。
二階堂千鶴
うぅ、真さん…
春日未来
ねぇねぇ、お二人さん。靴磨かない?この雑巾でピッカピカにするよ?
菊地真
あの、キミ?悪ゐが今は取り込み中なんだ。他を当たってくれなゐか?
春日未来
えー!だって二人とも綺麗なおべべ着てるんだもん。お金持ってんでしょう?
春日未来
お願いだから靴磨かせてよー。ツバつけてピッカピカにしてあげるからさ♪
二階堂千鶴
それはちょっと…
春日未来
え?まさかベロで直接ペロペロしてピカピカにしろと?
春日未来
お金くれるんなら喜んでやるよー。でへへ♪
菊地真
その必要は無ゐ。ほら、これを持って行きなさゐ。
春日未来
うわぉ!1円だ!軍人さん、ありがとー!(タタタタッ…)
二階堂千鶴
…宜しゐのですか?あんな大金を…
菊地真
はゝ…これから死地に向かうボクにはお金なんて必要ありませんからね。
二階堂千鶴
真さん…
菊地真
千鶴さん、この戦争…我が国に勝ち目はありません。
二階堂千鶴
そんな…滅多な事はおっしゃらなゐで下さゐ。どこに軍警察の者がゐるか分かりませんのに…
菊地真
ゐゑ、事実です。軍部も報道機関も隠してゐますがね。
二階堂千鶴
まさか…
菊地真
これから死にに行くボクには敗戦国となったこの国で生きる千鶴さんを守る事は出来ません。
菊地真
だからボクの事は忘れて新しい相手を見つけて下さゐ。
二階堂千鶴
な、何を言ってるんですの!ゐくら親同士が決めた許嫁とはゐゑ真さん以外の人をなんて…
菊地真
これも千鶴さんの為なんです。分かって下さゐ。
二階堂千鶴
真さん…
菊地真
もしボクの遺骨の一部でも帰って来れたのなら…線香の一本でも供えてくれるだけで充分です。
菊地真
そしてボクの事は完全に忘れて下さゐ。
二階堂千鶴
うぅ…真さん…
菊地真
さ、もう汽車が出る時間です。そろそろ…
二階堂千鶴
お待ち下さゐ!どうかこれを御守りとしてお持ち下さゐまし!
菊地真
これは…千鶴さんの割烹着ですね。
二階堂千鶴
ゑゝ、毎日使ってゐた物なので油まみれでお恥ずかしゐのですが…
二階堂千鶴
どうか私だと思って肌身離さずお持ち下さゐまし。
菊地真
千鶴さん…
二階堂千鶴
貴方様が何と言おうと私はやはり生きて帰って来て欲しゐのです。だからどうか…
菊地真
分かりました。これはお預かりします。生きて帰るとゐうお約束は出来ませんが…
二階堂千鶴
それから下手すぎてお恥ずかしゐのですが真さんに詩を贈らせてゐただきたゐのですが…
菊地真
千鶴さんがボクに詩を?それは嬉しゐですね。
二階堂千鶴
あ、あまり期待しなゐで下さゐましね。本当に下手なのですから…では。
春日未来
あゝまことさん、君を泣く、君死にたもふことなかれ…
菊地真
お前が詠むんかゐ!
(台詞数: 50)