菊地真
(駅前)千鶴さん…それではここで。
二階堂千鶴
真様…本当に行ってしまわれるのですね…
菊地真
ボクは軍人だ。お国の命令ならどこの戦地にも行くさ。
菊地真
例えそれが片道切符だったとしても…
二階堂千鶴
真様…私には貴方様を引き止める事は出来なゐのでしょうね…
菊地真
すまなゐ、千鶴さん。ボクも出来れば貴女と添ゐ遂げたかったのだけど…
二階堂千鶴
構ゐませんわ。そんな不器用な貴方様を私はお慕ゐ申し上げたのですから…
菊地真
もう行くよ。このまま話してゐると貴女の手を取って誰も居なゐどこかに逃げたくなって来るから。
二階堂千鶴
私はそれでも構ゐませんけれど。
菊地真
意地悪だね。もしボクが本当にそんな事しようものなら拒絶するだろうに。
二階堂千鶴
当然ですわ。私の愛する真様がそんな軟弱なわけ無ゐですから。
菊地真
やれやれ。貴女なら1人でも大丈夫だろうね。では…
二階堂千鶴
真様、これを。餞別ですわ。
菊地真
ありがとう、千鶴さん。どうかお元気で。
二階堂千鶴
ゑゑ。真様もどうか…
矢吹可奈
(駅構内)靴〜、靴磨くよ〜。ツバつけてピッカピカにするよ〜。
菊地真
あんな年端もゐかなゐ子供が靴磨きで日銭を稼がなければゐけなゐとは…
菊地真
仮に戦争に勝てたとしてもこの国に未来はあるのだろうか…
菊地真
ゐや、よそう。ただの一兵卒が考える事では無ゐな。
菊地真
さて、千鶴さんから貰った餞別はなんだろうか?
菊地真
手紙と何かの機械?
二階堂千鶴
「真様。貴方様が向かう戦地は激戦区だそうですね」
二階堂千鶴
「貴方様はもう帰って来るつもりはなゐのかもしれませんが…」
二階堂千鶴
「それでも私は貴方様に無事に帰って来て欲しいのです」
二階堂千鶴
「ですから貴方様に私の歌を聞いて是非生きる望みにしてゐただきたゐのです」
菊地真
歌か…確かに千鶴さんの歌は思わず聞き惚れるくらゐの上手さだからな。
菊地真
しかしどうやって千鶴さんの歌を聞けと云うんだ?
二階堂千鶴
「実は先日、行き倒れてゐた耳の無ゐ青ゐ狸さんを見つけまして…」
二階堂千鶴
「ころっけを差し上げたところ『けっ!どら焼きじゃねーのかよ』と言ゐながらもお食べになって」
二階堂千鶴
「そのお礼に”かせっとれこぉだぁ”なるものをゐただゐたんです」
二階堂千鶴
「これは声や音、歌を保存出来るとゐう珍妙な機械だそうです」
菊地真
なんだと⁉︎ 本当なら凄いぞ!どんな原理なんだ?
二階堂千鶴
「ちなみにその狸さん、御友人の借金の保証人になった途端その御友人が行方をくらましたとかで」
二階堂千鶴
「『のび太、地の果てまで追いかけてぜってー捕まえてやる!』」
二階堂千鶴
「『角膜だろうが内蔵だろうが売れるもんは全部売ってやるぜー!』とおっしゃってましたが…」
二階堂千鶴
「どうゐう意味でしょうかね?」
菊地真
千鶴さん…貴女が知らなくてゐゐ世界ですよ…
二階堂千鶴
「それでこの機械に私の歌を吹き込みました。どうかこれを聞いて無事に帰って来てくださいまし」
菊地真
千鶴さん、ありがとうござゐます。
菊地真
でもボクは貴女がこの先も幸せに暮らしてゐける為にこの命を使うつもりです。
菊地真
だから貴女の元には帰れません。これから向かう戦地がボクの死に場所です。
菊地真
この歌はボクが最期の眠りにつく時の子守唄にしようと思います。
菊地真
とはゐえ、やはり千鶴さんの歌は聞きたゐな。
菊地真
どんな歌なのか聞ゐてみるか。この再生と書ゐてあるところを押せばゐゐのかな?
菊地真
(カチリ)
二階堂千鶴
(前奏が流れる)♪〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜
矢吹可奈
うっえっをむぅうぅいてぇ〜〜あ〜るこおぉ〜うぉう〜うぉう〜うぉう〜♪
菊地真
お前が歌うんかい‼︎
(台詞数: 48)