菊地真
「今日の仕事場はここか」
菊地真
やって来たのは古くてボロボロの家だった。
菊地真
資料によると母子家庭らしい。
菊地真
鍵の掛かっているドアをすり抜けて部屋に入る。
菊地真
狭い部屋では探す手間もなく今回のターゲットを見つけることが出来た。母親の姿は無い。
周防桃子
「スゥ、スゥ…」
菊地真
よく眠っている。好都合だ。下手に目を覚まされて騒がれても面倒だからな。
菊地真
「このまま魂を連れて行こう」
菊地真
そう思いながら近付いた時に気付いた。
菊地真
彼女の袖から見える腕には沢山の生傷。それに煙草を押し付けたような火傷の痕。
菊地真
これはどう見ても…
菊地真
ふぅ…またか。
菊地真
こんな仕事をしていると珍しくはない。昔からある事だ。
菊地真
だが…慣れる事もない。
菊地真
今日、彼女を連れて行く事は彼女にとって救いなのかも知れない。
菊地真
…死が救いなんて…この子は何の為に生まれて来たのだろうか…
菊地真
このような光景を見るたびに思うことだ。
菊地真
さて…いい加減仕事をしなければ
菊地真
さて…いい加減仕事をしなければ…ん?
周防桃子
「スゥ…スゥ…お母さん…ごめんなさい…」
周防桃子
「生まれてきて…ごめんなさい…謝るから…虐めないで…」
菊地真
…
菊地真
…そういえば…上司から永年勤続の休暇かそれに代わる何か願いがあるか、と聞かれてたな。
菊地真
特にこれといって無いから放置していたが…
菊地真
ひとつ願いが出来た。
菊地真
聞き届けられるかわからないが…人の良い上司のことだ。多分大丈夫だろう。
菊地真
そうと決めたら彼女をこのままここに置いておくのは危険だ。
菊地真
また母親に虐待されるかもしれない。
菊地真
そうして彼女を抱き上げようと右手を差し出し…
菊地真
そうして彼女を抱き上げようと右手を差し出し…鎌を持っていることに気付いた。
菊地真
思わず苦笑が出る。
菊地真
命を刈る仕事をしている自分が命を助けようとしているのだからな。
菊地真
ただの気まぐれ…自分でもそう思う。
菊地真
だが…たまにはいいだろう…
菊地真
左手を差し出し彼女を抱え上げる。見た目以上に軽い。
菊地真
「さて、行くか」
菊地真
目が覚めた彼女にはどう説明をしようか…
菊地真
自分が新しい保護者になるべきか…それともどこかに預けるべきか…
菊地真
いろいろ考えることは多いが…
菊地真
今はこの小さな命の温もりを大事にしたいと思った。
(台詞数: 40)