菊地真
行くよ、昴……
永吉昴
ああ……真っ、いつでも来い!
二階堂千鶴
ひえぇえっ、な、なんでわたくしがこんなことにぃ……
永吉昴
おい、千鶴さんっ。そんなへっぴり腰じゃ真の球は捕れないぜ。もっと腰落とせよ!
二階堂千鶴
そ、そんなこと言われましても、キャッチャーは久しぶりなんですもの～っ
二階堂千鶴
そもそも何でこんな野球勝負することになったんですの!?
菊地真
それはね、千鶴さん。今朝、事務所でボクと昴が……
二階堂千鶴
(おーっほっほっほっほっほ!ここからは回想モードでお送りしますわよ!)
菊地真
― 朝 事務所 ― みんな、おっはよー!
永吉昴
あ、おはよう真。なんか今日はオレら宛てにファンレターが届いてるみたいだぜ。
菊地真
えっ、うそうそ、ホントに?
永吉昴
ホントホント、ほらこの……ダンボールっ、と!(ドサァッ)
菊地真
う、うわぁ～、また凄い数来たなあ……えーと、どれどれ
菊地真
真くん、好きです!世界中の誰よりも最高にカッコいいです!結婚してください! 16歳、女性
菊地真
真様、はぁぁ真様……私がこの世で見つけた唯一の王子様……お願い私を奪いに…… 14歳、女性
菊地真
真くん真くん真くん真くん真くん真くん真くん真くんか真くんか真くんかくんかくんか 9歳、女性
菊地真
…………
菊地真
………………………なんだろうね。この「嬉しいけれど、素直に喜べない感じ」は……
永吉昴
はっはっは! 真はいつも通り、最強だな～♪ さすがですね、765プロのお・う・じ・さ・ま☆
菊地真
むぅ～、人を好きになる気持ちに性別は関係ないだろ! っていうか、そういう昴はどうなのさ!
永吉昴
えっ、う、うっと。その～
菊地真
へへーんっ、どーせ僕と同じく女性ファンが多かったりするんだろ? 一つ読ませてもらうよ!
永吉昴
あっ、ちょっ、おま、勝手に!
菊地真
すばるん、めっちゃカワイイ! ボク、一目で惚れちゃいました! 最高です!(ええっ、そんな)
永吉昴
― 45歳 広島カープファン ―
菊地真
ぶっ
永吉昴
ちっくしょおぉおぉおぉおおっぉぉぉお!!
菊地真
何だこれ! 昴のファンレター、ぜーんぶ野球ファンのおじさん達からじゃないか!
永吉昴
いや、嬉しいんだよ、そりゃ応援に歳なんてカンケーねえし、無いよりすっげー嬉しいんだけど……
永吉昴
なんなんだこの……際立った偏りによる「素直に喜べねえ気持ち」は……
菊地真
……でも、いいじゃないか。昴は男の人にちゃんと「カワイイ」って言ってもらえて、さ。
永吉昴
いや、だったらお前の方がいいだろ! だって同年代にそれだけの圧倒的支持があんだぜ!?
菊地真
いや、そうだけど……これは僕が最終的に進みたい方向じゃないっていうかさ
永吉昴
はあ? なんだよてめー、うぬぼれてんじゃねーよ! そんだけ愛されてるくせに!
菊地真
(カチン)はあっ? なんだよそれ……環境に恵まれて勘違いしてんのはそっちの――
二階堂千鶴
(バタン)おぉーーーーっ、ほっほっほっほっほ! ごきげんゴッふえっぶおっふ
菊地真
あっ……
永吉昴
千鶴……さん
二階堂千鶴
ケホン! ゴホン! エフン!
菊地真
…………
二階堂千鶴
ふうっ……
永吉昴
…………
二階堂千鶴
…………
二階堂千鶴
おぉーーーーっほっほゴッふえっぶおっふ
永吉昴
もういいよ!! 姉さん!
菊地真
やり直した方が、よりいっそうむせてるし!!
二階堂千鶴
けほけほ……も、申し訳ありませんわ。高貴なわたくしとしたことが……で、お二人はここで何を?
永吉昴
えっ、ああその……ちょっと……
菊地真
ちょっと……二人でお互いの鬱憤が溜まってるから、野球で勝負しようかって話をしてたんです。
永吉昴
そ、そうそう……オレら二人でガチンコの野球勝負を――って、ええっ!? >【後編に続く】
(台詞数: 50)