光跡
BGM
Snow White
脚本家
mayoi
投稿日時
2015-04-03 02:44:00

脚本家コメント
春香さんの誕生日ということでちょっと短編でも。
大した意味はないので気楽にお読みください。

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如月千早
終電に乗って私たちは落ち合った。
如月千早
噴水の前、思いのほか冷え込む外気に身を震わせた頃。
如月千早
やって来た彼女に携帯を振ってみせる。画面の明かりで気付いたようだ。
如月千早
係員は目立つ色のジャンパーを着ていた。
如月千早
荷物を預け、バスへと乗り込む。
如月千早
暖房が効きすぎている点を除けば、車内は思いのほか快適だった。
如月千早
カーテンは初めから引かれていた。席を見つけ、ふたり並んで座る。
如月千早
ゆるやかに走り出すバス。微かな振動が体に伝わる。
如月千早
後ろの席の学生は周りを気にしながらもひそひそと会話を続けた。
如月千早
この日を楽しみにしていたのだろう。そんな彼らと私たちを乗せてバスは走る。
如月千早
やがて足下の淡いライトを残し、車内の照明が落とされた。
如月千早
声は消え、衣擦れの音と寝息とが満ち。
如月千早
照明の落とされた客席に、まるで私の意識だけが浮かんでいるようだった。
如月千早
日付が変われば春香はひとつ歳を取る。
如月千早
その前に彼女を連れ出したいと思った。何も言わずに付いてきてくれた。
如月千早
それが、辛かった。
如月千早
行き交う車の仄明かりがカーテンの向こうを走り去る。
如月千早
否、私たちもまた走り、去っていくのだろう。
如月千早
あの光ひとつひとつが人の営みなのだと思い、何かが胸を刺した。
天海春香
──眠れない?
如月千早
ささやく声に隣を見る。
如月千早
肩をすくめてみせると彼女も微笑んだ気がした。
如月千早
バスはトンネルへと入った。
如月千早
カーテンの隙間からとても強く、白い照明が私の目を貫く。
如月千早
明滅するように、瞬く間に現れては尾を引いて消えていく。
如月千早
カーテンを照らしながら、まるで流星のように光は駆けた。
如月千早
美しかった。これほど私を魅了して止まない光は初めてだった。
如月千早
トンネルを抜け、再び暗闇が訪れる。
如月千早
じきに隣から聴こえてきた寝息を頼りに、私も目を閉じた。
如月千早
今は休むべきだろう。旅はまだ、始まったばかりなのだから。

(台詞数: 30)