黒い天球
BGM
Emergence Vibe
脚本家
親衛隊
投稿日時
2016-08-21 22:37:01

脚本家コメント
夜ドラマです。

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周防桃子
人の目って不快。
周防桃子
ただでさえ不快なのに、それがいっぱいに敷き詰められた日には気が狂いそうになる。
周防桃子
姉さまは恐れていた。
周防桃子
あの気丈な姉さまが、だ。
周防桃子
生まれた時から疑問だった明けない夜。
周防桃子
太陽を知らない桃子は姉さまを説得し、ようやく夜を廻す事に成功した。
周防桃子
廻して、朝を呼んだ。
周防桃子
────
周防桃子
家にあった本を読んで、どこか遠くに存在するであろう世界の風景を知った。
周防桃子
何度も何度も、擦り切れるまで読み返した。
周防桃子
深緑を照らす朝日。降り注ぐ木漏れ日。羊飼い達を見下す青空。キラキラと煌めく海。
周防桃子
世界はなんて美しいんだろうと胸が熱くなった。
周防桃子
そして気付く。
周防桃子
桃子が憧れた世界にはどれも太陽があった事。
周防桃子
「明けない夜はない」なんて子供でも分かる。
周防桃子
姉さまは嘘や隠し事が嫌いだ。
周防桃子
案の定、姉さまを問いただしてみると「私が太陽を隠した」とあっさり白状した。
周防桃子
桃子の為、そして自分の為でもあると諭すように語った。
周防桃子
が、桃子には理解出来なかった。
周防桃子
当然だ。
周防桃子
桃子の目にはあの本で知った綺麗な世界しか見えていなかったのだから。
水瀬伊織
「ねえ、夜のティータイムは好き?」
水瀬伊織
「私? 私は好きよ。何故なら嬉しそうな貴女の顔が見られるから」
周防桃子
いつだって姉さまは、硝子玉のような瞳で桃子を見て、優しく微笑んでくれた。
周防桃子
その大好きな瞳が、涙で潤んだ瞬間を見た。
周防桃子
姉さま。
周防桃子
ほら、太陽だよ。
周防桃子
手を翳さなきゃ。眩しいよ。
周防桃子
どうしたの? 両手で顔を覆って。
周防桃子
見なきゃ。見えないよ?
周防桃子
こんなに星が瞬いているのに。
周防桃子
星?
周防桃子
姉さま、星は太陽と一緒に生きられるの?
周防桃子
違うよ。
周防桃子
桃子は知らない。
周防桃子
こんなの知らないよ。
周防桃子
満遍なく世界を照らした陽光は星々の姿を顕にして。
周防桃子
物珍しそうに一斉にギョロりと向いて。
周防桃子
硝子玉とは程遠い濁った目付きでニタリと笑んで。
周防桃子
桃子たちを見る、視る、観る。
水瀬伊織
『お空はね、死んだ人たちが行く所なのよ』
水瀬伊織
『ほら、貴女が読んでる絵本にも、そう書いてあるでしょ?』
水瀬伊織
『羊飼いの少年はお星さまになって、幸せに暮らしましたって』
周防桃子
気を失う最後の瞬間、昔の記憶が蘇った。
周防桃子
……ねえ、姉さま。
周防桃子
やっぱり姉さまは凄いわ。
周防桃子
だって、ずっと守っていてくれたのでしょう?
周防桃子
桃子、もう何も望まない。あの夜の中で……姉さまといつまでも一緒よ。
周防桃子
夜って素敵。
周防桃子
だって、全てを覆い隠してくれるんですもの。

(台詞数: 50)