深緑の出発地点
BGM
bitter sweet
脚本家
親衛隊
投稿日時
2016-01-30 12:31:33

脚本家コメント
出会う朝、いつもの風景、珈琲の香り。
次回で多分最終話です。
前作 ふたり
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北沢志保
「んぅ……」
北沢志保
朝日が眩しくて目を覚ました。
北沢志保
……朝日?
北沢志保
伊織さ……店長は!?
北沢志保
寝床から飛び出し、無我夢中で走り出した。
水瀬伊織
「あんた……」
北沢志保
「……」
北沢志保
静かな音楽と雑誌を読む少女。そこにはいつも通り……いや、元通りの景色が広がっていた。
北沢志保
「はあぁ……」
北沢志保
長いため息と共に、安堵でその場に崩れるようにして膝をつく。
水瀬伊織
「あー。まあ、元はと言えば私のせいだし、お客もいないから強くは言わないけど……」
水瀬伊織
「制服はちゃんと着なさい? はだけてるわよ」
北沢志保
「!」
北沢志保
息を付く間もない程の電光石火で、再び裏へと駆け込んだ。
水瀬伊織
「志保ー。後で話があるから終わったらすぐ来なさいよねー」
水瀬伊織
「……って、聞こえたのかしら」
水瀬伊織
――――――
北沢志保
「で、話ってなんです?」
北沢志保
替えの制服に着替えて心機一転。私はいつもの冷静さを取り戻していた。
水瀬伊織
「重要な話よ。このお店の進退について、さっきパ……父から連絡があったわ」
北沢志保
「……」
北沢志保
固唾を呑む。緊張のせいで胸の鼓動が速くなるのを感じた。
水瀬伊織
「その調子だと前置きはいらないわね。単刀直入に結果だけ言うことにするわ」
北沢志保
真剣な眼差し。その表情から解を察する事は難しい。
水瀬伊織
「結果は――」
北沢志保
手の甲に爪が立てられる。
北沢志保
お願い――どうか。
水瀬伊織
「『りょう』よ」
北沢志保
「……りょう?」
水瀬伊織
「そう」
北沢志保
「りょうって、ひょっとして『良』……ですか?」
水瀬伊織
「そうよ!」
北沢志保
「……っ」
北沢志保
溢れ出る激情に耐えられず、思わず店長に抱きついた。
水瀬伊織
「ちょ、志保!?」
北沢志保
「店長、私、私……」
北沢志保
服に埋められた表情は笑っているのか泣いているのか、自分でもよく分かっていない。
水瀬伊織
「はいはい、泣かない泣かない」
北沢志保
「な、泣いてません!」
水瀬伊織
「そういうことにしとく」
北沢志保
だから、と反論しようとして顔を上げようとすると――
北沢志保
「わ……」
水瀬伊織
「ありがとうね、志保」
北沢志保
抱きしめ返された。
水瀬伊織
「さて、とりあえず……」
北沢志保
「とりあえず?」
水瀬伊織
「お腹、空いたわね。朝ごはんにしましょうか」
北沢志保
「ふふ、そうですね」
北沢志保
今日から始まる新しい日。
北沢志保
それはきっと、前よりもきらきらと輝くのだろう。

(台詞数: 50)