深緑のふたり
BGM
恋の音色ライン
脚本家
親衛隊
投稿日時
2016-01-28 23:12:30

脚本家コメント
おやすみ。
前作 珈琲店
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/1300000000000031424/seq/424

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北沢志保
深黒の時間は静寂と共に、ただ静かに刻まれていく。
水瀬伊織
「志保、あのね……」
水瀬伊織
「……」
水瀬伊織
「……なんでもない」
北沢志保
そう言うと、店長は気まずそうに珈琲の入ったカップを口に運んだ。
水瀬伊織
「これどうやって……。そうか、新堂ね」
北沢志保
「よく分かりましたね」
北沢志保
当てが限られているとはいえ、珈琲の味から豆を頂いた人まで言い当てた。
水瀬伊織
「何度も家で飲んでるもの。……なんとなくわかるわよ」
北沢志保
家……。
北沢志保
「店長、新堂さんから聞いてますか?」
北沢志保
意地悪な聞き方をした。
水瀬伊織
「……もちろん」
水瀬伊織
「お店の事、水瀬の事、その殆どを話したと言っていたわ」
水瀬伊織
「それと……」
水瀬伊織
「志保。あんたが私を許すつもりはないって事も」
北沢志保
「はい」
水瀬伊織
「……」
北沢志保
ほんの少し、私が優しくなればこの話は終わるだろう。
北沢志保
だけど、まだあなたの答えを聞いていない。
北沢志保
「店長」
北沢志保
「このお店……好きですか?」
北沢志保
あなたの本心……あなたの口から、あの「裏言葉」の真意を――。
水瀬伊織
「……」
水瀬伊織
「……じゃない」
水瀬伊織
「好きに、決まってるじゃない……!」
水瀬伊織
「お店も、あんたも、みんな……!」
水瀬伊織
「みんな……大好きなんだから……」
北沢志保
真情を吐露し、子供のように大粒の涙をぽろぽろとこぼして彼女は言う。
北沢志保
「……良かった」
北沢志保
「好きで……良かったです……」
北沢志保
刺さっていた深黒の裏言葉も消え去った。
北沢志保
途端、感情の波が押し寄せて――
北沢志保
……。
北沢志保
子供のよう……か。
北沢志保
私も……同じね。
水瀬伊織
「……ごめんなさい、志保。私……ずっと言えなくて……あんたに迷惑かけて」
北沢志保
「いいんです。私の事なんて」
北沢志保
「でも……もう隠し事なんてしないで下さい。……約束ですよ?」
北沢志保
――――――
北沢志保
窓から薄く差しこむ月明かり。
北沢志保
光が作る影はふたつでひとつ。
水瀬伊織
「なんで手を握るの?」
北沢志保
「勝手にどこかへ行かないようにです」
水瀬伊織
「もうどこにも行かないわ。ずっと一緒よ」
北沢志保
そう言って強く握り返してくる。
北沢志保
「信じます。でも……離しませんから……」
水瀬伊織
「強情ね、あら?」
水瀬伊織
「……寝ちゃったか」
水瀬伊織
「おやすみ、良い夢を。志保」

(台詞数: 50)