同じ月に見られてる。
BGM
little trip around the world
脚本家
イッパイアッテサ
投稿日時
2016-01-11 20:58:58

脚本家コメント
エミリーの誕生日に投稿できなかったので、遅まきですが。

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水瀬伊織
……もう少し厚着したほうが良かったかしら。さすがに冷えるわね。
エミリー
そうですね、伊織さま。うららかな日が続いたとは言え、大寒前の時節ですから……
水瀬伊織
アンタも強情ね。もう止めてって要っても、あくまで『様』付けで通すわけ?
エミリー
も、申し訳ないです伊織さま。なにぶん、すっかり口馴染んでしまいましたし……
エミリー
なにより、日頃助けていただいておりますから。今宵の梅見物も、伊織さまの発案あってこそです。
水瀬伊織
そんなに卑下しなくてもいいわよ。あたし達は同じ劇場の同輩で、アイドルとしてのライバル。
水瀬伊織
それで、友達。立場に上も下もないの。アンタだって、みんなを支えてる一人なんだから。
エミリー
そう……でしょうか。私も皆様の助けになっているのでしょうか……?
水瀬伊織
(……エミリーは、たいていこんなことを言っちゃうのよね。控えめな性質も美徳だけど、)
水瀬伊織
(もう少し自信と自負を持ってもいいのよね。……そう、あたし達が出会った頃から、そう。)
水瀬伊織
(……)
エミリー
(『……』)
水瀬伊織
(海外からアイドル志望者が来るって聞いて、最初はみんな動揺してたわね。)
水瀬伊織
(英語で話さないと、ってね。誰も前に出ないから、しょうがなく伊織ちゃんが挨拶したわよ。)
水瀬伊織
(『Nice to meet you. May I introduce myself?』)
エミリー
(『あ、あの……お初にお目にかかります。私、エミリー・スチュアートと申します。』)
水瀬伊織
(エミリーが日本語できるなら、あらかじめみんなに伝えときなさいよ、バカプロデューサー!)
水瀬伊織
(まあ、言葉の問題はクリアできたわよ。むしろ問題はその後だったわ……)
エミリー
(『あの、莉緒さん。お披露目公演では小町紅を引きたいのですが、どこで購入すれば……』)
エミリー
(『律子さん。公演の挨拶ですが、歌舞伎の口上と落語の小噺、どちらで学ぶべきでしょうか?』)
水瀬伊織
(……憧れの日本に来て、浮き足立ってたのかしら。次の日からは、みんなを質問詰め。)
水瀬伊織
(日本人のこっちが知らないレベルの文化理解度。そして、微妙にズレてる感覚。)
水瀬伊織
(結局それなりに答えられたのは、貴音と伊織ちゃん位だから、必然あたし達に懐いてきたわ。)
水瀬伊織
(まあ、「知りたがりの妹」ができたようなものよ。教えてあげるの、嫌いじゃないわ。)
水瀬伊織
(……)
水瀬伊織
(『ちょっとエミリー、なんでロールケーキをお箸で食べるのよ。そこは黒文字でしょ。』)
エミリー
(『すみません伊織さま、はしたない姿をお見せして。……実は。』)
エミリー
(『お箸の扱いが、まだ得手でなくて。少しでも練習しているんです。』)
水瀬伊織
(『その箸、アンタの手の大きさに合ってないのよ。大方、綺麗だから選んだんでしょ?』)
水瀬伊織
(『塗物屋のひとつくらい知ってるから、今から買い替えに行くわよ。車、用意させるわ。』)
エミリー
(『……ありがとうございます、伊織さま。』)
エミリー
(『なにかお返しをしたいのですが……なにぶん若輩の身、伊織さまに出来ることがなく……』)
水瀬伊織
(『さっきの「ありがとう」で十分よ。それと、そこまで畏まらなくていいから!』)
水瀬伊織
(『……』)
水瀬伊織
……
水瀬伊織
ねえエミリー。エミリーはいつでも、日本に来たばかりの自分は人より劣っていると思ってない?
エミリー
……!
水瀬伊織
劇場のみんなの中で、エミリーほど日本文化を知ってる人はいないわ。
水瀬伊織
どころか、イギリス文化を知ってる人は誰もいない。エミリーしか知らない事は沢山有るわ。
水瀬伊織
日本舞踊の身のこなしや、アンタは伏せたいみたいだけど英語の発音や。秀でてる点もある。
エミリー
そう……でしょうか。
水瀬伊織
なによりね。友達どころか知人も居ない地に来て、理想に向かって日々鍛練する……
水瀬伊織
……それだけの思いの強さを持ってるエミリーが、誰かと比べて劣っているなんてことはない筈よ。
水瀬伊織
だから、ちょっと自信持ちなさい!例えば、この伊織ちゃんを越えてみせる位の気概を持つとか。
エミリー
……はい、精進します。……ですが……
水瀬伊織
ああもう、煮え切らないわね!……あの月でも見てみなさい!
水瀬伊織
いまのあたし達は、あの月程は輝いてないのよ。そういう意味では、みんな同レベルなの。
水瀬伊織
いつかは、あの月のウサギよりも高名になるくらいのつもりになりなさい。目標は高く、よ。
エミリー
……分かりました。……ときに、月の模様を『兎』になぞらえるなんて、浪漫派ですね伊織さま。
水瀬伊織
……う、しまった。イギリスには『月にウサギ』の話が無いのかしら。締まらないじゃないの。

(台詞数: 50)