深黒の鼓動
BGM
ライアー・ルージュ
脚本家
親衛隊
投稿日時
2015-08-21 21:37:58

脚本家コメント
色々あるのです。
前作 黒騎士様
http://m.ip.bn765.com/app/index.php/drama_theater/info/uid/1300000000000031424/seq/386

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北沢志保
「んぅ……」
北沢志保
食器の当たる音で意識が引き戻された。
北沢志保
どうやら待ち人を待ちきれず、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
北沢志保
「……あ」
北沢志保
我ながら素っ頓狂な声を発したと思う。
水瀬伊織
「おはよう」
北沢志保
そこにはいつもと違う明るさで、珈琲を作る待ち人の姿があった。
北沢志保
「おはよう……ございます?」
北沢志保
寝惚け眼を擦る深夜と早朝の間。
北沢志保
外はまだ暗く、鳥のおはようも聞こえない。
水瀬伊織
「あー、先にただいまかしらね」
北沢志保
「……随分と遅かったんですね。何処に行ってたんです?」
水瀬伊織
「おデコ赤いわよ」
北沢志保
質問を流され、代わりに淹れたての珈琲が差し出された。
北沢志保
ちなみにおデコが赤いのはカウンターに顔を伏せて眠っていたからだ。
北沢志保
「……」
北沢志保
とりあえず摩っておこう。
水瀬伊織
「魘されてたみたいね」
北沢志保
「……見てたんですか」
水瀬伊織
「辛いの?」
北沢志保
「辛かったです」
水瀬伊織
「過去形なのね」
北沢志保
「はい。でも、今はもう……眠ったみたいです」
水瀬伊織
「ふぅん?」
北沢志保
あなたのおかげなんですよ。
北沢志保
なんて、恥ずかしくて言えるわけないから心で小さく呟いた。
水瀬伊織
「なら、良かったわ」
北沢志保
そう言って店長はカップに口を付ける。
水瀬伊織
「……」
北沢志保
「……」
北沢志保
互いに多くは語らず、テーブルを挟んでゆったりとした時間を過ごしていく。
北沢志保
柔らかな珈琲の香りに包まれる店内は、いつもより心を落ち着かせた。
北沢志保
トクン。
北沢志保
「?」
北沢志保
微かに――
北沢志保
眠っていた筈の夢魔の胎動を感じた。
水瀬伊織
「……志保、あんたに大切な話があるの」
北沢志保
静寂を破り、店長は唐突に切り出す。
北沢志保
発せられた言葉は少しだけ震えていて、それがより一層、得体の知れない不安を押し上げた。
北沢志保
トクン。
北沢志保
「はぁ……。また新しい目論見ですか?」
北沢志保
平静を装って軽く返すが、スカートの裾は強く握られていた。
水瀬伊織
「……あのね」
北沢志保
ばつが悪そうに発言を抵抗しつつも、絞り出すように言葉を足していく。
北沢志保
トクン。
北沢志保
治まって。
北沢志保
お願いだから。
水瀬伊織
「このお店……」
水瀬伊織
「あんたにあげるから」

(台詞数: 49)