水瀬伊織
……危険はないようね。来ていいわよ。
徳川まつり
ご苦労でした。元帥陸軍大将、水瀬伊織殿。
水瀬伊織
その堅っ苦しい呼び方はやめて。どうせ誰も見ていないわ。
徳川まつり
ふふ、姫はいつでも姫なのですよ。
徳川まつり
でもやっぱり、伊織ちゃんって呼ぶ方が落ち着くかな。
水瀬伊織
……ひどいものね。
水瀬伊織
勝利の爪痕、とでも呼ぶのかしら。
徳川まつり
それでも勝利には違いありません。民も喜ぶのです。
水瀬伊織
ふん。
水瀬伊織
第一次世界大戦、ヨーロッパ諸国はひどく傷付き、疲弊した。
水瀬伊織
そのトラウマから「侵略」は悪とされ、「防衛」という言葉に置き換えられたの。
水瀬伊織
とんだ皮肉よ。実情は何も変わっていないのに。
水瀬伊織
空爆、ゲリラ、占領──先制攻撃以外のあらゆる軍事行動を内包するというのにね。
徳川まつり
伊織ちゃん……。
水瀬伊織
この勝利は私の判断ミスだわ。
水瀬伊織
もっとうまくやれたはずよ。正確な情報と一発の砲弾で、戦争は終わるの。
徳川まつり
伊織ちゃん。いえ、水瀬元帥。
徳川まつり
人を殴ることと殴り殺すとは、結果の違いにすぎないのです。
徳川まつり
どんなに優しく叩いても、転んだ拍子の打ち所が悪ければ命に関わります。
徳川まつり
共通するのは、人を傷付ける一瞬の衝動──それが全てなのです。
水瀬伊織
分かってるわよ。でもね。
水瀬伊織
いかに勝つかを考えるのが将官の役目。そして──
水瀬伊織
勝つことの意義を考えるのが、元帥の役目よ。
徳川まつり
この結末に納得していないのですね?
水瀬伊織
できる訳ないじゃない。
徳川まつり
ならばまた……やり直すのですね。
水瀬伊織
……ええ。
水瀬伊織
瓦礫の上に城は建たない。アンタの居場所はここじゃない。
水瀬伊織
戻るわよ、まつり。
徳川まつり
ふふ、どっちが従者なんだか。
徳川まつり
あ、タンポポ。黄色でふわふわで可愛いのです。
徳川まつり
……靭いですものですね、草花は。
水瀬伊織
まつり、どうかしたの?
徳川まつり
はいほー、いま行くのですよー。
(台詞数: 34)