深緑の珈琲係
BGM
bitter sweet
脚本家
親衛隊
投稿日時
2015-07-11 20:42:35

脚本家コメント
惹かれる心に――笑みがこぼれる。
前作から少し間が開きました。ごめんなさい。
前作 来訪者
http://m.ip.bn765.com/app/index.php/drama_theater/info/uid/1300000000000031424/seq/379

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北沢志保
深緑の喫茶店へと向かう足取りがいつもより軽い。
北沢志保
というのも先日、店長から賄い時の珈琲係に任命されたからだ。
北沢志保
曰く、味はまあまあらしい。なんとも味気ない評価だ。
北沢志保
だが嬉しかった。心では意外にも「仕事を任された」という喜びが比重を置いていたようだ。
北沢志保
私ってメイドに向いているのかも。
北沢志保
と思ったが、私の中のメイドは従順というより従属のイメージの方が強い。
北沢志保
前言撤回。やはり私はメイドに向いてはいない。
北沢志保
私は……共に手を繋いで歩んでいきたい。
北沢志保
他の誰でもない彼女と、あの喫茶店で、同じ時を刻みたい。
北沢志保
……なんとも恥ずかしげなフレーズを思いついてしまった。これは永遠にしまっておこう。
北沢志保
「ふふっ」
北沢志保
店長も付き従うタイプではなさそうだ。
北沢志保
私と似ているのかもしれない。
北沢志保
それなら、私と同じ気持ちであったならいいな。
北沢志保
そんなことを思いつつ、喫茶店の扉を開けた。
北沢志保
――――――
北沢志保
「おはようございます……あれ?」
北沢志保
最初に違和感を覚えた。
北沢志保
いつもなら雑誌を読みながら唸っている店長がいるはずなのだが。
北沢志保
「……いない」
北沢志保
荷物を置いて店内を軽く徘徊する。明かりは全て消えていた。
北沢志保
……どこかに出かけたのだろうか。
北沢志保
しかし、裏口は施錠されていなかった。
北沢志保
私は店長から合鍵を預かっているので、仮に出たとしても施錠をして行くはず。
北沢志保
単純にかけ忘れたか、かけ忘れるほど急いでいたか、或いは――
北沢志保
「泥棒?」
水瀬伊織
「誰がよ」
北沢志保
「ひゃああ!」
水瀬伊織
「あら、可愛い声出すじゃない」
北沢志保
「どど、どこから湧いてきたんですか、あなたはっ!」
水瀬伊織
「カウンターの下に隠れてたのよ。いつも同じ挨拶じゃつまらないじゃない?」
北沢志保
「割と真面目に心臓が止まるのでやめてください!」
水瀬伊織
「それは大変ね。善処するわ」
北沢志保
「はぁ……」
北沢志保
無駄な緊張と安堵で一気に疲れた。
北沢志保
この人と行動すると寿命が縮まりそうでもある。
北沢志保
まあ、猫を追いかけて危うく怪我をしそうになった私が言う台詞でもないけど。
水瀬伊織
「さて、と」
北沢志保
目的を達成して満足したのか、店長はいつものように雑誌を読み始めた。
北沢志保
夜更かしでもしていたのだろうか。目が充血している。
北沢志保
「店長。目……赤いですよ?」
水瀬伊織
「知ってるわ」
北沢志保
「お客さんも、いつ来るかわからないです。ここは私に任せて休んでください」
水瀬伊織
「大丈夫なの? あんた一人で」
北沢志保
「こ、珈琲なら出せます」
水瀬伊織
「……」
北沢志保
「なにかあったら呼びに行きますから、心配しないでください」
水瀬伊織
「……そう。じゃあ、お願いするわ」
北沢志保
思ったよりも素直に聞き入れてくれた。
北沢志保
初めてお店を任された瞬間だった。

(台詞数: 50)